独占企業ないしは独占体が、その地位を利用して、生産物やサービスの価格を市場競争価格以上の水準に設定する価格をいう。この結果、独占的企業は、競争的企業に比べてより高い独占的利潤を得ることができ、買い手を独占的に搾取し、経済資源の適正な配分と分配をゆがめることになる。独占価格の設定は、特定企業が自然資源を独占的に支配する自然独占の場合や、国の法的規制によって成立する場合(専売制度や公益事業など)にも可能となる。しかし、現代の資本主義で広く認められるのは、少数の巨大企業によって市場が事実上支配されている寡占的産業で、いわゆる「寡占的相互依存性」の結果として形成される寡占的な高価格の設定の場合である。固定設備の巨額化や販売経路の系列化などの結果として産業への競争企業の新参入が困難となること、少数巨大企業間では価格競争が回避され、主導的企業による価格指導制が他企業の協調的な追従によって受け入れられる傾向があることなどが、独占価格設定を可能にする条件である。もちろん、競争的産業でもカルテルなど競争制限的な行動の結果として独占価格の設定が可能である。以上いずれの場合でも、独占価格は、その生産コスト(生産価格)を正しく反映せず、企業に独占利潤をもたらし、消費者などを搾取し、経済的不公平を生み、また企業の技術進歩によるコスト削減努力を弱め、経済効率と発展を抑制する傾向をもたらす。
[吉家清次]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…この点から,市場に非常に多くの競合的な需要者・供給者が存在する競争市場で成立する市場価格を競争価格という。また需要者・供給者のいずれか一方,もしくは双方が比較的少数である不完全競争市場において成立する市場価格を広く独占価格と呼び,競争価格から区別する。【佐藤 寿博】
[マルクス経済学]
市場価格は市場で現実にあらわれる価格であって,需要と供給の相互の関連のなかで決定される。…
…また,市場が独占化されると,価格競争が回避される一方,広告やモデル・チェンジなどの非価格競争が激化し,販売費が膨張するという懸念も強い。 このほか,独占化によって価格の下方硬直性が強まり,一般的物価騰貴の原因になりはしないかという管理価格インフレ,独占価格の非伸縮性が生産や雇用の大幅な変動をもたらさないか,独占企業の経営者に与えられる自由裁量権が,従業員の採用に際して女性や少数民族に差別的に行使されないかといった諸問題にも,関心がもたれるに至った。
[独占への対策]
独占規制の必要を説く声は経済学そのものと同じほど古い歴史をもつ。…
※「独占価格」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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