プリムラ(英語表記)primrose
Primula

デジタル大辞泉 「プリムラ」の意味・読み・例文・類語

プリムラ(〈ラテン〉Primula)

サクラソウ科サクラソウ属の植物の総称。園芸品種が多く、花が大きいポリアンサや、マラコイデスオトメザクラ)・オブコニカトキワザクラ)・ジュリアンなどがある。西洋桜草プリムローズ 春》

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精選版 日本国語大辞典 「プリムラ」の意味・読み・例文・類語

プリムラ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] primula ) サクラソウ科サクラソウ属の学名でこの属に含まれる植物の総称。また園芸上はニホンサクラソウと区別して外国原産のサクラソウのみをさすことがある。世界中に約三〇〇種あり、美しい花をつけるものが多く、広く栽培されている。プリムローズ。おとめざくら。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「チューリップやプリムラやグロキシニアや」(出典:流星(1924)〈富ノ沢麟太郎〉三)

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改訂新版 世界大百科事典 「プリムラ」の意味・わかりやすい解説

プリムラ
primrose
Primula

サクラソウ科サクラソウ属Primulaの植物は,北半球温帯域に約600種が分化している多年草であるが,日本産のサクラソウやクリンソウのように美しい花をつける種が多く,重要な園芸植物の一群となっている。日本では外国産のサクラソウ属園芸植物をプリムラと称することが普通で,ここでは外国産のもの,あるいは外国で観賞用に品種改良され,多く栽培されるものをとりあげる。

(1)プリムラ・マラコイデス(和名ケショウザクラ,オトメザクラ)P.malacoides Franch.(英名fairy primrose)は中国雲南省原産。ヨーロッパで温室草花として改良され,品種が多く,小輪の二倍体系品種と大輪の四倍体系品種とがある。葉は紙質の長楕円形で,花茎や葉裏に白粉を帯びるものと帯びないものがある。温室栽培では12月から5月まで咲き続け,径2~5cmの花を数段輪生する。花色は紅,桃,藤桃,紫紅,白などで,八重咲種もある。

(2)プリムラ・オブコニカ(和名トキワザクラ)P.obconica Hance(英名top primrose)は中国湖北省原産。1879年ヨーロッパに送られ,そこで品種改良された。葉は丸型で大きく,茎葉に腺毛があり,プリミンprimineという毒素を含む。これによってかぶれる人もいる。四季咲性もあるが,ふつうは冬~春によく咲く温室栽培用種である。花径3~6cmと巨大で,高さ10~20cmの花茎上に散形状に咲く。花色は紅,紫紅,桃杏(とうきよう),白,藤紫など。

(3)プリムラ・シネンシスP.sinensis Lindl.(英名Chinese primrose)も中国原産。葉は大きく浅裂する心臓形。冬~春に開花し,径3~4cmの花を数段,輪生する。花色は,濃紅,朱紅,桃,白など。温室用種。

(4)プリムラ・ポリアンタ(和名クリンザクラ)P.polyantha Mill.(英名polyanthus(primrose))は,ヨーロッパ原産のサクラソウ属のP.verisP.elatior,それにP.vulgarisなどの種が交雑され,園芸的に育成された種である。倒卵形葉を根出し,早春,高さ10~15cmの花茎上に径2~8cmのやや大型の花を散形状に咲かせる。暗紅,紅,橙,黄,桃,白,紫紅,藤青,紫青など,花色が多い。花壇または鉢物用として栽培される。近縁の園芸育成種にプリムラ・アカウリスP.acaulis Hill.と呼ばれるプリムラ・ブルガリスP.vulgaris Huds.(英名English primrose)の改良種や,プリムラ・ポリアンタとプリムラ・ジュリエP.juliae Kusn.(カフカス原産)の交配によるジュリアン系Pjulianaなどがある。早咲き,小型でかわいらしく,じょうぶなため,花屋の店頭に多く見られるようになった。

(5)プリムラ・ケウエンシス(和名ヤグラザクラ)P.kewensis Wat.は19世紀末にイギリスのキュー植物園で生じたプリムラ・フロリブンダP.floribunda Wall.とプリムラ・バーティキルラータP.verticillata Forsk.との自然交雑種。鋸歯のある倒卵状へら形の葉を根出し,高さ20~30cmの花茎を出して,径2~3cmの鮮黄色花を数段,輪生する。花期は冬~春。全株白粉を帯びるものをファリノサvar.farinosaという。温室用種。

(6)プリムラ・アウリキュラ(和名アツバサクラソウ)P.auricula L.(英名auricula,bear's-ear)はヨーロッパ原産で,石灰岩地に野生し,園芸種はプリムラ・ヒルスタP.hirsuta All.との交配種といわれる。多肉質倒卵形の葉で,高さ10~20cmの花茎上に径3~4cmの花を散形状に咲かせる。紫褐,淡茶褐,黄などの渋い花色で,中心部が大きく黄白色の目入りとなる。温室用種として扱われている。

 プリムラ類は野生種からの系統選抜だけでなく,多くの種間交雑起源の園芸種も育成され,冬から春の鉢物として,また花壇植物として重要な位置を占めている。日本原産のクリンソウP.japonica A.Grayも大型でじょうぶなため,湿性の植込み草花として注目され,花色の変わったものが育成されている。

プリムラ類はいずれも毎年,種子をまいて栽培をすることが多い。5~6月ごろ,平鉢にバーミキュライトを用いて播種(はしゆ)し,発芽後1回移植して育苗し,9月に鉢上げをして温室栽培をする。マラコイデス以外は多年草化しやすく,ポリアンタ,アカウリス,ジュリアンなどは宿根草として花壇用草花に扱われることもあり,9~10月に株分けによって殖やすこともできる。温室栽培をされた鉢物は,冬季開花するため,屋内のガラス越しの日のあたる所へ置き,灌水と追肥を行えば5月ごろまで咲き続ける。耐暑性が低いので,育苗時や古株の越夏は半陰地で通風をよくするとよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プリムラ」の意味・わかりやすい解説

プリムラ
ぷりむら
[学] Primula

サクラソウ科(APG分類:サクラソウ科)サクラソウ属の総称。北半球の寒帯または山地に約500種あり、日本にサクラソウ、クリンソウなど約20種分布する。一般にプリムラというとき、このうち外来種をさす場合が多い。近年よく栽培されるのは、ポリアンサP. polyantha Mill、マラコイデスP. malacoides Franch.、オブコニカP. obconica Hanceなどである。ポリアンサはヨーロッパ原産の数種が交雑されてできあがったものである。葉はへら状で、花は大きく、花色は赤、桃、黄、青、白色など豊富である。マラコイデスはオトメザクラともいい、中国雲南省原産。茎葉や花蕾(からい)などに白粉をつけ、葉は有柄で長楕円(ちょうだえん)形、毛茸(もうじ)に覆われる。冬から初春、細い花茎を数本出し、赤、桃、白色などのサクラに似た花を散形状に数段つける。オブコニカはトキワザクラともいい、中国西部原産。葉は有柄で心臓形。開花期は長く、多くの花茎の先端に赤、桃、橙(だいだい)、青、白色などの、わりあい大きな花を球状に集めて開く。毛茸にプリミンを含み、かぶれることがある。これらのほか、矮性(わいせい)のものとしてジュリアンP. juriana hybridがある。また、まれに栽培されるものとして、カエデ状の葉をつけるシネンシスP. sinensis Lindl.や、黄色の花をつけるキューエンシスP. kewensis W.Wats.など数種がある。

 いずれも温室草花として取り扱う。5~7月に播種(はしゅ)するが、種子が微細なので、夏の暑さに弱く、栽培には技術を要する。夏は風通しのよい日よけ下で育て、生育に応じて鉢にあげ、秋は温室に取り込んで開花させる。冬の鉢花としては、シクラメンとともに代表的な種類である。

[伊藤秋夫 2021年3月22日]

文化史

プリムラはラテン語で最初を意味し、春いちばんに咲くこの花の習性にちなむ。英名のプリムローズprimroseは、プリムラprimulaからプリムロールprimeroleを経て成立した。ドイツでは花序が鍵(かぎ)束に似ていることから、鍵の花Schüsselblumeとよばれ、隠された財宝のドアをその花が開けるとする民話が伝わっている。イギリスにはプリムラ・ベリスPrimula veris L.(キバナノクリンザクラ)のような黄花種しか自生していなかったが、17世紀の初めに紫花のブルガリスP. vulgaris L.(イチゲコザクラ)がトルコから伝わり、花色の改良が始められた。

[湯浅浩史 2021年3月22日]


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百科事典マイペディア 「プリムラ」の意味・わかりやすい解説

プリムラ

サクラソウ科の一属で,全世界に約600種ある。おもに中国西部〜ヒマラヤに分布し,日本にもサクラソウクリンソウハクサンコザクラ等15種が自生。根茎のある多年草で,根生する葉の中から花茎をのばし,上部に散形状または輪状に花をつける。花冠は漏斗(ろうと)状または高盆状で5裂する。一般に鉢植,花壇で栽培されている代表的な外国種を以下にあげる。 プリムラ・ポリアンサ(クリンザクラとも)は数種の交雑で作られた園芸種。1茎多花で花色多く,3〜4月に開花。露地で越冬できて,株分けでふやせ,花壇に向く。〈ジュリアン〉と呼ばれる小型品種は,本種とプリムラ・ジュリアエとの交雑品。プリムラ・シネンシス(カンザクラとも)は中国原産。全体に白毛を密生し,葉は掌状で,花色は豊富。7月に種子をまき,2〜3月にフレームで開花。鉢物向き。プリムラ・オブコニカ(トキワザクラとも)は中国湖北省原産。大輪で花色も多い。不耐寒性。5〜6月にまき,鉢植にして,フレーム内で2〜4月に開花させる。葉や花柄の腺毛に毒素(プリミン)があるので,かぶれる人がある。プリムラ・マラコイデス(ケショウザクラ)は中国雲南省原産。細い花茎を多数のばし,散形花序を数段につける。白・桃・紅色等の大〜小輪がある。5〜6月まきでフレーム内で栽培し,1〜3月の鉢物とする。プリムラ・ブルガリスはヨーロッパ原産。ポリアンサに似るが,1茎1花。花色は黄・白・紅・青紫色等で,3〜4月に咲く。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プリムラ」の意味・わかりやすい解説

プリムラ
Primula; primrose

サクラソウ科サクラソウ属の属名であるが,日本の園芸界では通常外国産の同属の種類をプリムラと呼んでいる。サクラソウ属は北半球の温帯に広く分布し,約 200種があって,特に東アジアの温帯に種類が多い。日本にもサクラソウ (桜草)をはじめ高山帯を中心に数種がある。外国産のいわゆるプリムラとしては,ヨーロッパ原産でイギリスで改良されたポリアンサスをはじめヨーロッパ系の種類としてアカウリス種 P. acaulis,オブコニカ種 P. obconica,中国大陸原産で小花が多数つくチュウカザクラ P. sinensisなどがあり,春早く室内を飾る鉢物として親しまれている。いずれもへら形の根出葉をロゼット状に生じ,株の中心から花茎を伸ばす。花は花茎の上部に散形状につくが,ポリアンサスでは赤,黄,青,白などがあって数花がつき,花冠の中心部の色が異なる。アカウリスでは淡紫色や紅色で,1花茎に1花がつき芳香がある。逆にオブコニカでは多数のピンクの小花が集ってつく。

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世界大百科事典(旧版)内のプリムラの言及

【サクラソウ(桜草)】より

…またクリンソウの近縁種がマレーシア,ジャワの東アジアの山地に,ユキワリソウの近縁種が南アメリカにも分布している。 園芸種のプリムラは,クリンザクラ(プリムラ・ポリアンタ)Ppolyantha Mill.(雑種起源),アツバサクラソウP.auricula L.(ヨーロッパ原産),ケショウザクラ(プリムラ・マラコイデス)P.malacoides Franch.(中国原産)などが有名で,多くの品種が作出されている。また日本産ではサクラソウ(多数の園芸品種(イラスト)がある)やクリンソウが鉢植えや花壇で草花として楽しまれている。…

【有毒植物】より

…イチョウの果肉(種皮)や葉に含まれるギンゴール酸も皮膚炎をおこす。花の美しいプリムラ類による皮膚炎の原因は,葉の腺毛に含まれるプリミンによるものである。パパイア,パイナップル,イチジクなどの乳液によるかぶれは,タンパク質分解酵素による刺激のためとされている。…

※「プリムラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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