プロセス制御(読み)プロセスせいぎょ(その他表記)process control

改訂新版 世界大百科事典 「プロセス制御」の意味・わかりやすい解説

プロセス制御 (プロセスせいぎょ)
process control

プロセス制御という言菓は,かつて,製鉄石油化学などのプロセス産業において,生産・用役プラントでの温度圧力濃度などのプロセス変量の自動制御を指す言葉であった。情報技術の発展により,制御対象はプロセス変量から製品の品質と量を含むプラント全体に,さらには工場全体に拡大した。今日では,物,エネルギーおよび情報の流れを中心とする工場全体の制御を意味するものとなっている。

 プロセス制御は3階層の機能をもつ計算機群により実現されている。生産計画レベルは,受注または需要予測の結果を目標とし,それに合致するよう各種製品に関する年次,月次,日次等の生産計画を作成し,下位の生産管理のレベルに指令する。また,下位から生産実績のデータを受け取り,これに基づいて計画の修正を行って目標の達成を図る。生産管理レベルは,上位より指令された生産計画を目標とし,それが実現されるよう原料・用役の状況,プラントの稼働状況の見通しのもとで各プラントの操業計画を立案し,それを下位のプラント運転レベルに指令する。同時に,生産実績およびプラントの稼働状況のデータを受け取り,生産計画との偏差がなくなるよう操業計画を修正する。プラント運転のレベルは,指令された操業計画に基づいてプラントを運転し製品を生産する。また,生産実績とプラントの状況を把握して上位に報告する。

 プラント運転レベルでは,つぎの機能が必要である。(1)状況把握 (a)プロセスの状況把握 データ収集,データ処理,プロセスの特性の認知。(b)装置の状況把握 プラント,計器等の動作の監視,異常検出。(c)製品の状況把握 中間および最終製品の性状・機能の測定,規格適合の判定。(2)運転員との交信 運転員の意思を制御系に伝え,プロセス・装置・製品の状況を運転員に伝達する。(3)プラント操作 (a)プラント運転の開始,停止,異常処理。(b)プラントの最適運転条件の決定。(c)プロセス変量の制御。

 これらの機能は次のように実現されている。プロセス,装置,製品の状況は各種の計測器,分析計などにより測定され,ディジタル量に変換されデータハイウェーに送り出される。プラントの各所に存在するプラント操作用の計算機は,これらの値を目標値と比較し偏差をなくすよう適切な操作入力を算出し,プラントを操作する。プラントの中央制御室に置かれている計算機は,これらのデータを取り込んで,プロセス,装置,製品の状況把握を行い,それが操業計画に合致するよう,必要に応じてプラント操作用の計算の目標値等を変更する。運転員から計算機への指令はコマンドにより,また計算機から運転員への情報の伝達は文字および画像のディスプレーによることが多い。プラント,装置,製品の状況は上位の計算機へも伝送される。

 プロセス制御によって,各種産業のプラントは,品質の安定した製品を需要に即応して必要な量だけ,最小のコストと最小の人員で生産することが可能となった。目本のこの分野の技術は世界の最高水準にあり,高品質・低価格の製品の提供に大きく寄与している。
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化学辞典 第2版 「プロセス制御」の解説

プロセス制御
プロセスセイギョ
process control

一つのプロセスを形成している各装置のプロセス変数(圧力,流量,温度など)を自動制御すること.制御方法としては,フィードバック制御とフィードフォワード制御がある.前者は,プロセスの出力信号を検出し,それと目標値との偏差に応じた調節をする方法で,とくに応答の速いプロセスに有効である.しかし,反応時間の長い反応装置などでは,たとえば原料の組成に変動があると,できあがった製品の品質を検出してから反応温度などの制御量を調節したのでは,すでに原料の組成がふたたび変動してしまい,十分な制御ができない.化学プロセスには,このように応答の遅い装置が多くあり,この場合,原料の組成と反応温度と製品の品質との間の関係を数式(プロセスモデル)に表しておいて,原料組成の変動を検出し,それに応じて反応温度を調節するフィードフォワード制御,あるいはそれとフィードバック制御とを組み合わせた方式がとられる.なお,プロセス制御の場合,各装置の効率を上げることも大切であるが,最終的な目標はプロセス全体の効率を上げることであり,各装置の運転条件がそれぞれの装置を単独で運転する場合の最適条件に一致しないのが一般的である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロセス制御」の意味・わかりやすい解説

プロセス制御
プロセスせいぎょ
process control

原料や素材を特定の状態で処理し,化学的,あるいは物理的変化を与えて工業製品を生産する操作,もしくはその過程を工業プロセスという。たとえば化学,製鉄,製紙,水処理などのプロセスがある。このような工業プロセスでは温度,圧力,流量,原料組成,効率など (これらをプロセス状態量という) を,ある一定値に保つこと,あるいはある一定のパターンで変化させることが必要である。そのための制御をプロセス制御という。比例-積分-微分 (PID) 動作をする制御装置 (プロセス制御では普通調節計と呼ぶ) を用いて,フィードバック制御を行う。プロセスには外乱 (雑音) が多いが,フィードバック制御によって外乱の影響を著しく低減させることができる。近来,調節計にコンピュータを使う DDC(direct digital control)方式が多く用いられるようになった。フィードバック制御をシーケンス制御と組合せることもある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロセス制御」の意味・わかりやすい解説

プロセス制御
ぷろせすせいぎょ
process control

プロセス・オートメーションの工程を制御するシステムをいう。石油工業、セメント工業のように、種々の原料から物理的あるいは化学的な処理操作によって製品を生み出す過程をプロセスという。プロセス制御はプロセスの組成、流量、温度、圧力、湿度、濃度などをそれぞれの目的に応じた条件に保つことによって行われる。

[立花康夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「プロセス制御」の意味・わかりやすい解説

プロセス制御【プロセスせいぎょ】

物とエネルギーの流れを中心とする設備,施設,工場などでの品質・量を含む全体の制御。プロセスオートメーションにおいて中心的役割を果たす。
→関連項目自動制御

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世界大百科事典(旧版)内のプロセス制御の言及

【自動制御】より

… 狭義の自動制御は,制御しようとしている状態の種類によって二つに大別される。工業プロセスの状態――たとえば温度,流量,圧力,液位,組成,濃度,混合比率など――の制御をプロセス制御といい,物体の幾何学的状態――たとえば位置,角度,方位,姿勢など――の制御をサーボ機構という。冷蔵庫の温度制御はプロセス制御の例である。…

※「プロセス制御」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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