日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘイウッド」の意味・わかりやすい解説
ヘイウッド
へいうっど
Thomas Heywood
(1573―1641)
イギリスの劇作家。伝記的詳細は不明だが、リンカーンシャーの牧師の息子に生まれ、ケンブリッジ大学に在学したと推測される。1596年ごろロンドンで作家兼俳優として生活、俳優は1619年まで続けた。220編余の戯曲を物したと公言しているが、現存するものは二十数編にすぎない。作品はあらゆるジャンルにわたるが、多くは中産階級的モラルとセンチメントを反映している。代表作は「家庭悲劇」の傑作『優しさで殺された女』(1603)。ほかに荒唐無稽(むけい)なロマンス劇『ロンドンの4人の徒弟』(1592?)、酒場の看板娘の波瀾(はらん)万丈のロマンスを描く二部作『麗しき西の乙女』(1610?、30?)、古典神話に材をとる『黄金時代』に始まり『鉄時代』で終わる五連作(1611?~13)など。劇作以外にも、ロンドン市長就任祝賀ページェント、翻訳、詩、時事批評と幅広い活動を続けた。ロンドンの聖ジェームズ教会に眠る。
[野崎睦美]
『中野里皓史訳『優しさで殺された女』(『エリザベス朝演劇集』所収・1974・筑摩書房)』