ヘモクロマトーシス(読み)へもくろまとーしす(英語表記)hemochromatosis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘモクロマトーシス」の意味・わかりやすい解説

ヘモクロマトーシス
へもくろまとーしす
hemochromatosis

血色素症血色素沈着症ともよばれ、肝硬変糖尿病皮膚色素沈着を三大主徴とする疾患で、鉄代謝異常により体内に多量の鉄が沈着するためにおこる。原因不明の特発性のものは遺伝的素因が関与し、遺伝形式は常染色体顕性遺伝とされており、消化管よりの鉄の吸収が亢進(こうしん)している。続発性のものは多量の鉄の経口摂取、または頻回輸血などが原因となる。鉄の過剰摂取の原因としては、鉄剤の長期摂取、ぶどう酒の長期多飲、鉄鍋(なべ)使用などがあげられる。鉄の沈着は肝臓膵臓(すいぞう)、睾丸(こうがん)、心筋、皮膚におもにみられ、肝硬変、糖尿病、睾丸萎縮(いしゅく)、心不全、黒みがかった皮膚の色が生じ、ブロンズ糖尿病とよばれることがある。男性に多く、男女の比は10対1で、男性では40~50歳代、女性では閉経期以後に多い。血清中の鉄が上昇し、不飽和鉄結合能は減少している。確定診断には、肝臓、皮膚、消化管粘膜の生検によってヘモジデリン(血鉄素)の沈着を証明する。治療には瀉血(しゃけつ)および鉄のキレート剤デスフェリオキサミンの投与が行われる。

[高橋善弥太]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘモクロマトーシス」の意味・わかりやすい解説

ヘモクロマトーシス
hemochromatosis

血色素症,血色素沈着症,青銅色糖尿病全身,特に膵臓,肝臓,皮膚などに鉄が過剰に沈着して,皮膚が青銅色を呈し,肝硬変,糖尿病,心不全,性腺機能低下などを伴う疾患をいう。中年以降の男性に多く,腸からの鉄の吸収が高まる場合 (特発性) と,他の疾患に合併する場合 (2次性) とがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報