《グリム童話集》15番の話。貧しいきこり夫婦が,2人の子どもを森に捨てるが,兄のヘンゼルが落としておいた小石が道しるべとなって,2人は無事帰宅する。2度めに捨てられたときにはパンを道しるべとしたため,小鳥に食べられてしまい,2人は道を見失う。白い小鳥について行くと森の中にお菓子の家があり,それを食べていると中から魔女が出てきて招じ入れられる。魔女はヘンゼルを食べるつもりで太らせる。妹のグレーテルはパンがまの中へ突っ込まれそうになるが,機転で逆に魔女を入れ,かまのふたを閉じて魔女を焼き殺す。グレーテルとヘンゼルは魔女の宝石を持って,途中の川はカモに渡してもらって帰宅する。
これはグリム兄弟が,ヘッセンで採集した複数の口承昔話から再話した話である。しかし全体としては〈子どもと人食い〉という話型に属し,ヨーロッパのみならずインドネシア,南アメリカにも分布している。日本の〈天道さん金の鎖〉も,導入部は異なるが構造的にはほとんど同じで,同系統の話と考えられる。また,この昔話をもとにE.フンパーディンクが3幕の歌劇を作曲した。
執筆者:小澤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
『グリム童話集』15番の話。貧しい木こり夫婦がヘンゼルとグレーテルを森の中に捨てる。兄妹は森の中でお菓子の家に到達。そこに住む魔女は、兄を太(ふと)らせてから食べようとする。妹はパン焼き竈(がま)が十分熱せられたか見てくるよう命じられたとき、魔女をだまして竈に押し込んで殺し、兄と2人で無事帰宅する。カッセルの薬局経営者ウィルト家の人が語ったもの。第五版(1843)において、前年に公刊されたアルザス地方のメルヒェンから文体上大きな影響を受けて、今日の形になった。
[小澤俊夫]
グリム兄弟の原作を基にドイツの作曲家フンパーディンクが1893年に完成し、同年ワイマールで初演され、大成功を収めた。作曲者の実妹アデルハイト・ウェッテによる台本で、原作の暗い雰囲気は一掃され、この童話の宗教的側面が強調されている。音楽的にはワーグナーの影響が強く、特定の人物や事象を表す、いわゆる示導動機が巧みに利用されて全体の統一が図られているが、旋律は民謡風に親しみやすく、全曲は素朴な暖かさに包まれている。だれにでも楽しめる歌劇として人気が高く、クリスマス・シーズンに世界各国で上演されている。日本での全曲初演は1949年(昭和24)。
[三宅幸夫]
『高橋健二訳『グリム童話全集I』(1976・小学館)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… ベルディとワーグナー以後は,彼らに匹敵するほど偉大なロマン派オペラの作曲家はもはや現れなかった。ドイツではワーグナー風の技法をメルヘンの世界と結びつけたフンパーディンクの《ヘンゼルとグレーテル》があり,イタリアでは,下層市民の生活に題材をとり,なまなましい現実感を盛り上げたマスカーニの《カバレリア・ルスティカーナ》とレオンカバロの《パリアッチ》が現れた。しかし,マスカーニやレオンカバロによるベリズモ(写実主義)オペラの成功は一時的なものにすぎず,18世紀以来イタリアで培われてきたベル・カント唱法の伝統を受け継いで抒情的旋律美の最後の峰を築いたのは,《ラ・ボエーム》や《蝶々夫人》で知られるプッチーニであった。…
…バルセロナ,ケルン,フランクフルト・アム・マインで作曲を教えた後,1900年ベルリン高等音楽学校教授に招かれた。代表作はオペラ《ヘンゼルとグレーテル》(1893)で,グリム童話に題材をとり民謡風の旋律とともにワーグナーの手法を特徴とする。ほかに同じく童話オペラ《王子と王女》(1910)などの作品が知られる。…
※「ヘンゼルとグレーテル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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