ベヌア(その他表記)Aleksandr Nikolaevich Benua

改訂新版 世界大百科事典 「ベヌア」の意味・わかりやすい解説

ベヌア
Aleksandr Nikolaevich Benua
生没年:1870-1960

ロシアの画家,美術史家,批評家,演出家。ペテルブルグ生れ。ベノアAlexandre Benoisとも呼ばれる。モスクワ大学法科卒業。《芸術世界》の主宰者として20世紀初頭のロシア画壇に重きをなし,パリにおけるディアギレフの美術展やバレエ・リュッス公演に協力,ロシア芸術の西欧進出に一時代を画した。諸民族の歴史と文化に対する深い造詣から生まれたその画業は,独自の様式化と色彩をもつ舞台美術の分野においてとくに精彩を放ち,またバレエの台本執筆,あるいはドラマの演出などその活動は劇場芸術の全般に及んだ。1926年国外に去り,後半生を欧米の劇場活動に捧げた。父方家系にフランス人,母方の家系にイタリア人の血をうけ,生まれながらにしてロシアと西欧の接点におかれた彼がヨーロッパの新しい芸術運動の発展に大きな役割を演じた経緯は,自伝《わが回想》2巻(1960-64)に詳しい。美術史の著作に《諸民族の美術史》(1912-17。未完)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベヌア」の意味・わかりやすい解説

ベヌア
べぬあ
Александр Николаевич Бенуа/Aleksandr Nikolaevich Benua
(1870―1960)

ロシアの画家、舞台装置家。宮廷付建築家の息子としてペテルブルグに生まれ、美術アカデミーのレーピン教室で学んだ。家庭環境のため、好んで描いた主題は宮廷の豪華さであり、しかもそれを失われた美的世界としてとらえた。挿絵画家としてもプーシキンの『青銅の騎士』『スペードの女王』など優れた作品がある。舞台装置家としてはストラビンスキーのバレエ『ペトルーシュカ』(ボリショイ劇場)、モリエール『気で病む男』、プーシキン『石の客』(以上モスクワ芸術座)など。1926年パリに亡命絵画の代表作に『ルイ14世の散歩』(1897)、『パーベル1世時代の閲兵式』(1907、いずれもモスクワ、トレチャコフ美術館)がある。

木村 浩]

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世界大百科事典(旧版)内のベヌアの言及

【芸術世界】より

…また,この雑誌に参加した知識人,画家グループの名称。ディアギレフベヌアを中心に編集され,D.S.メレシコフスキーらの文芸評論を掲載し,バクスト,セローフ,ソモフKonstantin Andreevich Somov(1869‐1939),ドブジンスキーMstislav Valerianovich Dobuzhinskii(1875‐1957)らの挿画で飾られた。西欧の同時代の芸術に刺激をうけ,反アカデミー,反リアリズムを指向し,1904年まで全12号を刊行。…

【レ・シルフィード】より

…ニジンスキー,アンナ・パブロワ,カルサビナらが出演。背景画を描いた舞台装置家ブノア(A.N.ベヌア)により《レ・シルフィード》と改題された。ロマンティック・バレエの代表作《ラ・シルフィード》に対し,空気の精たちを描くこの作は,主役だけでなく,コール・ド・バレエを効果的に使い作品全体に幻想性をもたらした。…

※「ベヌア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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