日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベルリン・ドイツ・オペラ
べるりんどいつおぺら
Deutsche Oper Berlin
ベルリンの歌劇場。1912年シャルロッテンブルク・ドイツ歌劇場の名で、当時はベルリン市外のシャルロッテンブルクに開設された歌劇場が起源。1930年代は従来のベルリン国立歌劇場と覇を競ったが、第二次世界大戦中の1943年爆撃で破壊された。現称のもとに新歌劇場が旧西ベルリンに開場したのは1961年だが、この間も劇場付属のベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団の上演は他劇場を使って続行され、フリッチャイ、K・ベームらが指揮するとともに、モーツァルトの全歌劇のレパートリー化、現代作品の初演が進められた。なかでもシェルヘン指揮、ゼルナー演出によるシェーンベルク『モーゼとアーロン』のドイツ初演(1959)は話題となった。また作曲家リヒャルト・ワーグナーの孫であるウィーラント・ワーグナーWieland Wagner(1917―1966)の演出でベーム指揮によるワーグナー『トリスタンとイゾルデ』上演は、この歌劇場の名をバイロイト祝祭劇場にちなんで「新バイロイト」とよばれるまでに高めた。再建後は、1961年以降ゼルナー、1972年以降ゼーフェルナーEgon Seefehlner(1912―1997)、1976年以降パルムSiegfried Palm(1927―2005)についで、1981年以後はゲッツ・フリードリヒGötz Friedrich(1930―2000)が総監督を務めた。そして、ベーム、ホルライザーらによる指揮に加え、1965年音楽監督にマゼールが就任、その地位は1981年から1990年までロペス・コボスを経て、1997年からティーレマンChristian Thielemann(1959― )に受け継がれた。開設から36年間に60作品の世界初演を実現、また20世紀の重要作品のドイツ初演にも力を注いだ。とりわけ作曲家ヘンツェ作品の上演は名高い。楽団は1963年(昭和38)東京・日生劇場の開場記念公演で初来日。また1987年、東京と横浜で行われた同歌劇場によるワーグナー作『ニーベルングの指輪(ゆびわ)』上演は、同作品の日本における完全な上演の最初であった。
[美山良夫]