ベン図(読み)べんず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベン図」の意味・わかりやすい解説

ベン図
べんず

論理における推論を図形的に表すもので、オイラー図式を修正してベンJohn Venn(1834―1923)が導入(1880)した。「SはMである」「MはPでない」という二つの前提が与えられたとする。このとき、三つの円を、可能なすべての重なりをもつように書いて、平面を八つの領域に分ける。それぞれの円をS、M、Pと名づける。Sの内部の点はSを、Sの外部の点はSの否定を表す。他の円についても同様である。八つの領域について、空である領域に斜線を書く。「SはMである」から、Mの外部のSの部分に斜線を書く。「MはPでない」から、Pの内部のMの部分に斜線を書く。その結果、Sの斜線のない部分はPの斜線のない部分の外部にあり、「SはPでない」ことが推論される。次に、空でないことがわかった領域には×印をつける。空でない領域が、隣接した二つの領域のいずれかがわからないときは、×印をその境界上に書く。「あるSはMである」とする。このとき、Sの内部の、MとPの境界上に×印が書かれ、「MはPである」とすると、×印はS、M、Pの共通部分の内部に移り、「あるSはPである」ことが推論される。四つの場合には円のかわりに楕円(だえん)を用いて、平面を16の領域に分ける。これでかなり複雑な推論も図で表すことができるが、五つ以上の場合には、一見して理解することはきわめて困難になるので、数が多いときには、行列状の四角形を用いる。

[西村敏男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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