改訂新版 世界大百科事典 「ペトルスペレグリヌス」の意味・わかりやすい解説
ペトルス・ペレグリヌス
Petrus Peregrinus
13世紀フランスの学者。本名ピエール・ド・マリクールPierre de Maricourtで,ペトルス・ペレグリヌスはラテン名。生没年不詳。ピカルディー出身で,パリにいたころはR.ベーコンの学友であった。アンジュー家のシャルルがイタリアのルチェラ征服におもむいたときの陣中で,1269年にペレグリヌスは《磁石についての手紙》を書いた。彼は技術者として従軍していたと考えられる。《磁石についての手紙》の中で彼は,天然磁石の極をさがす方法を述べ,磁石を二つに切断すると切断面に極が現れることを記述し,磁石どうしの吸引が生ずる理由を定式化した。磁針は北極星にひかれるとそれまでは考えられていたが,ペレグリヌスはこれが天の極にひかれるとした。彼は,天体の方位を定めるための360度目盛付浮子(うき)磁針を述べ,さらにピボットに乗った目盛付羅針盤を考案した。また,磁石によって永久運動する機械を考えた。これは,磁力を機械運動に変換するアイデアとして世界最初のものである。《磁石についての手紙》は,磁気についての観察,実験を述べた歴史上初めてのまとまった書物である。ペレグリヌスの仕事の内容は,16世紀にW.ギルバートによって継承されることになる。
執筆者:高橋 雄造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報