ホシムシ(読み)ほしむし(英語表記)peanut worm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホシムシ」の意味・わかりやすい解説

ホシムシ
ほしむし / 星虫
peanut worm

星口(ほしぐち)動物門に属する種類の総称、またはそのなかの1種。すべて海産で、石の下、岩の裂け目海藻の根の間、巻き貝ツノガイなど死んだ貝殻の中などいろいろな場所にすみ、ほかの動物に寄生するものもある。

 体は細長い円筒形で、長さは2~20センチメートルのものが多いが、外国では60センチメートルぐらいになるものもある。体は前方の吻(ふん)部といくらか太い体幹部とからなる。体の表面は乳頭突起で覆われていて、なかには乳頭の上に小さなキチン質の小板をもつものもある。体節はない。吻は体内に引っ込めることができ、その先端にある口の周囲にはいろいろな形の触手が配列している。触手の中には中空の管があって、これが消化管に沿って後方に伸び、触手器官とよばれている。吻の表面には環状あるいは不規則に並んだ棘(とげ)や鉤(かぎ)をもつものが多い。消化管は、口、食道、腸に続き、腸は一度体の後端まで下がるが、ふたたび反転して上に向かい、体幹の前方背面に肛門(こうもん)として開く。血管系はないが、体腔(たいこう)内には赤血球や変形細胞を浮かべた体腔液が満たされている。雌雄異体であるが、外部から雌雄を区別できない。成熟した卵が腎管(じんかん)内に満たされると、夜間あるいは早朝に勢いよく海中に放出される。同時に雄も精子を放出し、海中で受精する。トロコフォラ幼生になって浮遊生活後、変態して底生生活に入る。

 世界で約300種、日本には約60種が知られているが、人間生活とはあまり関係はなく、日本ではスジホシムシSipunculus nudusをタイ、スズキカレイコチなどの釣り餌(え)にしている。

 種のホシムシGolfingia ikedaiは、イケダホシムシともよばれ、体長5センチメートル内外、体表には多くの皮膚乳頭が密生する。東京湾以南に分布し、潮間帯の砂礫(されき)底にすむ。

[今島 実]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例