改訂新版 世界大百科事典 「ホシムシ」の意味・わかりやすい解説
ホシムシ (星虫)
星口(ほしぐち)動物門Sipunculaに属する無脊椎動物の総称。海産で砂泥中や岩の割れ目,サンゴ礁の隙間,海藻の根部間,死んだツノガイの中などにすむ。世界で約140種あり,一部のものは釣りの餌に用いられている。
体は円筒状で体節はなく,前方の細い吻(ふん)と後方の太い体幹部とからなる。体長は2~20cmほどで,体色は淡紅色,灰色,黄灰色,青緑色などがある。吻の先端には口が開いていて,その周囲に指状,房状や樹枝状などの触手が数本~数十本並んでいる。触手の表面の繊毛で微小動物や付着性藻類などを集め,粘液でかためて食べる。触手の中には触手器官と呼ばれる中空の管があってこれが消化管に沿って後方にのびている。また吻の表面には部分的,または全面にとげやかぎが配列している。吻は収縮筋の収縮によって体内に引き入れられ,そして体壁の環筋層の収縮により体腔液が圧縮されて前方にのびる。体表はキチン質の鱗板をもった多くの皮膚乳頭でおおわれており,タテホシムシ科の種類では楯状部をもっている。消化管は口から後方にのび,体幹の後端部まで達した腸はらせん状にもつれながら再び前方に向かい,吻と体幹部の境界付近の背面に肛門が開いている。血管系はなく,体腔内には赤血球や変形細胞をうかべた体腔液が満たされている。雌雄異体で,卵と精子は体外に放出されて受精する。卵割は環形動物の場合とよく似ており,トロコフォラ幼生になって遊泳後,変態して水底に沈む。
ホシムシ類は発生の特徴から環形動物の多毛類やユムシ類と近縁であるといえるが,ホシムシ類には体節制がなく,特有な触手器官があり,肛門が体前方に開いており,また血管系がないことなどが,大きな特徴になっている。
日本では,サメハダホシムシPhascolosoma scolops,イケダホシムシGolfingia ikedai,スジホシムシSipunculus nudus,スジホシムシモドキSiphonosoma cumanenseなどがふつうに見られる。広島,愛知,高知などの各県では釣餌虫としてよく用いる。パラオ諸島ではこの類の大型な1種を食用にする。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報