トルコ中央部,アンカラの東約200kmにある,前16世紀から前1200年ころまでヒッタイト王国の首都であったハットゥサḪattušaの遺跡名。ほとんど完全に忘れられていたヒッタイトの存在を,発掘によって確認した。1834年の発見以来ボガズキョイと呼ばれることが多いが,遺跡名のもとになった村は,ボアズカリBogazkaleが現在の正式名称である。ドイツのウィンクラーH.Winklerが1906-12年に約1万枚の粘土板を発掘し,フロズニーB.Hroznýらによる解読の結果,ヒッタイト語のインド・ヨーロッパ語族への帰属が確認されて以来,欧米の学者が彼らの祖先の最古期にあたる歴史の解明と故地究明への手がかりを求めて,異常なまでのまなざしを向けている遺跡である。1931年以来,ドイツのビッテルK.Bittelによって組織的な発掘が続けられている。
遺跡は肥沃な河谷平野をのぞむ山麓の起伏の多い丘の上にあり,前1900年ころに存在したアッシリア商人の居留区カールムkārumの跡に建設された都市で,北と南の二つの部分からなる。早く建設が始まった北部は,北西から南東まで約1200mにわたって丘のまわりに不整形な城壁をめぐらし,南東部の城壁沿いに王城がつくられており,その一部に粘土板が発見された王室記録文書室があった。北部の中央で発見された大神殿は,80以上の倉庫をめぐらした中庭のある2内陣からなり,他に類のない建造物である。聖職者の居住区が隣接する。北部より広い南部は前14世紀に拡大され,全域の面積は約120haになった。1世紀のち,北部は北東にもさらに拡張された。南部には4神殿があり,塔をもつ厚い城壁に囲まれ,3門が設けられた。それぞれの門に表された浮彫から,東は王門,南はスフィンクス門,西はライオン門と呼ばれている。スフィンクス門の下には長さ71mの間道があって,城壁の内と外とをつなぎ,通用門や出撃門として使われていた。
執筆者:小野山 節
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トルコの首都アンカラのほぼ東150キロメートルに位置するヒッタイト帝国の都。古代名ハットゥシャあるいはハットゥサ。1906~1907年、1911~1912年の二度にわたり、ドイツ人のアッシリア学者H・ウィンクラーによって発掘調査が行われ、エジプトとの間に交わされた和平条約をはじめ、1万枚を超える粘土板文書が発見された。1931年ドイツ人のK・ビッテルによって発掘調査は再開され、現在に至っている。ハットゥシャは高地の市域と低地の市域とに分かれ、高地は自然の地形を利用した王宮、低地は神殿が、おのおのの市域の中心をなしている。今日までの調査では、天候神、太陽神を祀(まつ)っていた大神殿に付属した貯蔵庫、アッシリア植民都市時代の住居址(し)群、城壁、出撃門、神殿、王宮、王室文書庫などがみつかっている。ハットゥシャは紀元前16世紀ハットゥシリ1世によって建設されたが、前14世紀後半北方のカシュカに攻略され、ダッタシャシュ(位置不明)に遷都を余儀なくされた。前1190年ごろ、小アジアの西から移動してきた「海の民」によってハットゥシャは崩壊した。
[大村幸弘]
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トルコ共和国の首都アンカラの東約200km,ヨズガットの北西にある小村。アナトリア最古の大国家ヒッタイト王国の遺跡。考古学的な発掘により,古都ハットゥシャの石造城砦,城門址,王宮址,神殿址が明らかとなり,さらに出土した楔形文字・象形文字粘土板の解読の結果,ヒッタイトに関するさまざまの史実が明らかにされた。
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…ベルリン大学教授。1903‐04年の2シーズンにわたって,シドンにおいて古代のフェニキアの都市遺跡の発掘に従ったのち,当時学界の注目を集め始めていたボアズキョイの発掘権を得て,06‐07年の間,同地の都城の遺構の発掘を行った。ボアズキョイは,旧約聖書のヘテ人すなわちヒッタイト民族に関係の深い遺跡らしいとして,問題になり始めていたのであるが,ウィンクラーは発掘に取りかかるや,直ちに大量の粘土板を得,しかもその一部は,彼の熟知するアッカド語で記されていたので,間もなくこの遺跡が,まさにそのヒッタイト人の王国の首都ハットゥサにほかならないことを見きわめた。…
※「ボアズキョイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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