改訂新版 世界大百科事典 「ぼてぼて茶」の意味・わかりやすい解説
ぼてぼて茶 (ぼてぼてちゃ)
主として島根県松江などの日本海側に残る飲茶習俗の一つ。〈ぼてぼて〉とは大型の茶筅を振る音から生じた名称で,ばたばた茶(富山県朝日町),ぶくぶく茶(沖縄)ともいう。茶道の茶碗より少し大型の茶碗に,番茶や煎茶,あるいは発酵させた黒茶を釜で煮立てたものを入れ,茶筅の先に塩をつけてよく振り細かく泡をたてる。これに好みの具(赤飯,黒豆飯,山菜,漬物など)を適当に入れて飲む(地方によって入れないところもある)。この振茶の習俗は沖縄より鹿児島,松山,松江,富山,新潟などで村の寄合のもてなしとして広く分布しており,茶の湯との関係は明らかではないが,中世より近世にかけて行われた庶民的な〈煎じ茶〉の流れを引くものかと推定される。
執筆者:熊倉 功夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報