日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポンポナッツィ」の意味・わかりやすい解説
ポンポナッツィ
ぽんぽなっつぃ
Pietro Pomponazzi
(1462―1525)
イタリア・ルネサンス期の哲学者。マントバで生まれる。パドバで医学の学位を得たのち、フェッラーラでアリストテレスの『霊魂論』を注解、最後はボローニャで教え、そこで多くの著作を残す。とくに主著『霊魂の不滅について』(1516)が出てからは、多方面から非難を受け、1518年ローマ教会に訴えられた。
人間の霊魂を、存在や思惟(しい)のために物質を必要としない不滅で永遠な純粋知性と、物質を必要としその内に浸って生きる動物との中間に位置づけ、この中間的な知性たる霊魂こそ人間に固有なもので、精神の純粋さと物質の複雑さを兼ね備えた人間の本性を表現しているとみなす。人間は普遍的なものを考えうるという点で、「ある意味で」不死ではあるが、肉体なしに思考することができず、内的に肉体に結び付いているために、「端的に」可死的であるとする。また霊魂を可死とする立場から、死後の賞罰のためよりも、徳のために徳を求めることに、より大きな功績を認める。しかし不死を完全に否定したわけではなく、信仰の問題にゆだねた。パドバのアリストテレス主義の代表者である。
[大谷啓治]