マイエミール文化(読み)マイエミールぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「マイエミール文化」の意味・わかりやすい解説

マイエミール文化 (マイエミールぶんか)

ロシア連邦,アルタイ地方に分布する文化。M.P.グリャズノフは,この地方の初期遊牧民文化をマイエミールMaiemir期(前7~前6世紀),パジリク期(前5~前3世紀),シベ期(前2~後1世紀)と編年した。マイエミール期は後期青銅器時代のカラスク文化に続くもので,黒海沿岸のスキタイ文化や南シベリア,ミヌシンスク地方のタガール文化などの初期に並行する。轡(くつわ)や鏡の型式鉄器が完全に欠如していることを規準として,マイエミール草原,ソロネチヌイ・ベロク付近などのいくつかのクルガン墳墓)や偶然の発見物がこれにあてられた。ボリシャヤ・レチカ集落址などのオビ川上流域やカトゥン川下流域の遺跡もこれに含まれるとされたが,それらは後にボリシャヤ・レチカ文化として区別されている。アルタイ地方のこの時期の文化の編年には研究者によって意見の相違がある。S.V.キセリョフは〈マイエミール文化〉を全体としてタガール文化に並行するものと考え,グリャズノフのマイエミール期に続けてマイエミール文化第Ⅱ期(前5~前4世紀)をも設定し,その次にパジリクの時期を置いている。またS.I.ルデンコは,アルタイ地方スキタイ時代文化の中にマイエミール期をとくに区別する意味はないとしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイエミール文化」の意味・わかりやすい解説

マイエミール文化
まいえみーるぶんか
Майэмир/Mayemir

ロシア南東部、南シベリアの山地アルタイから東カザフスタンにかけて分布する文化。前期(前7~前6世紀)と後期(前5~前4世紀)とに分けられる。前期は、ミヌシンスクのタガール文化との共通点が多いが、墓に馬を陪葬する点はアルタイ的で、パジリク文化と一致する。後期にはスキタイ的なアキナケス型鉄製短剣(鐔(つば)がハート形両刃の短剣)などの鉄製品が現れる。この文化を独自なものと認めるかどうかについては異論も多く、後期をパジリク文化のなかに含める説、前・後期ともにパジリク文化のなかに含めてしまう説もある。

[林 俊雄

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイエミール文化」の意味・わかりやすい解説

マイエミール文化
マイエミールぶんか
Maiemir culture

前7~4世紀のアルタイ地方における牧畜狩猟民の文化。ユーラシア大陸におけるスキト=サウロマタイ文化に多く共通する要素をもつ。 19世紀に,ナリム川上流のマイエミール草原でクルガンが発掘されたので,この名がつけられた。前7~5世紀初期は,青銅器文化であり,前5~4世紀後期は鉄器が利用された。土器の形態,道具,美術品はエニセイ川上流のタガール文化のものに類似する。人類学的特徴は,初めコーカソイドであるが,のちに若干のモンゴロイド混血がみられる。この文化の遺跡とクルガンは,南部および中部アルタイ地域に分布している。

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