タガール文化(読み)タガールぶんか(英語表記)Тагар/Tagar

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タガール文化」の意味・わかりやすい解説

タガール文化
タガールぶんか
Tagar culture

ロシア,南シベリア,ミヌシンスク盆地に継起した新石器時代から鉄器時代の一連の文化 (ミヌシンスク文化 ) の一つ。前8~2世紀頃エニセイ川上流域で興り,前4~3世紀頃から鉄器を使用。河川に沿って集落址なども発見されているが,この期のおもな遺構は,方形の列石と隅に巨石の置かれた大小の墳丘をもつ墓である。クルガンと呼ばれる墳丘下には,通常木棺があるが,まれに板石で被覆された墓壙内に石棺が存在する場合がある。1人の男と1~2人の女と子供を伴う家族墓である。死者の頭蓋骨は,コーカソイド型の特徴を示している。この期の人々は定住的な灌漑農耕を行い,遊牧的な牧畜も多少行なっていた。ミヌシンスク近くのボヤラ山脈の岩壁画にみるように,集落はわら屋根の炉跡をもつ木造ないし泥の家で,天幕風の家もある。そして,これらの家の近くにやぎとしかが描かれている。タガール期の芸術は,獣形の模様をもつスキタイのものに類似する。ロシアの学者は,タガール文化のにない手は『史記』『漢書』にみえる丁零と説明するが,日本の学者のなかには反対意見もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タガール文化」の意味・わかりやすい解説

タガール文化
たがーるぶんか
Тагар/Tagar

ロシア南東部、南シベリアのエニセイ川中流域を占めるミヌシンスク盆地を中心として栄えた青銅器文化。紀元前7世紀ころに、先行するカラスク文化にかわって登場し、前2~前1世紀ころにタシュトゥイク文化に移行した。住民の生業は牧畜であったが、同時に灌漑(かんがい)農耕も行われていた。タガール文化の青銅器、とりわけ短剣、馬具、鏃(やじり)、またそれらに装飾としてつけられた動物文様などには、当時ユーラシア草原全域にわたって流布していたスキタイ系文化との共通点が多く認められる。タガール文化の末期には鉄器が現れ、また死者をミイラ化したり、石膏(せっこう)で死仮面(デスマスク)をつくるなど、次のタシュトゥイク文化期に盛行することになる風習がみられる。

[林 俊雄

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