マザーズ(読み)まざーず(英語表記)Mothers

翻訳|Mothers

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マザーズ」の意味・わかりやすい解説

マザーズ
まざーず
Mothers

1999年(平成11)11月に東京証券取引所東証)に創設された新興企業向け市場。名称は、Market of the high-growth and emerging stocksの下線のアルファベットをつなげたもの。従来の日本の証券市場では、企業の設立から公開・上場までの平均年数が25年以上と極端に長かったが、企業の成長スピードは著しく速くなっており、グローバリゼーション進展に伴う国際競争力の向上に資するという視点からも、有力な資金調達手段である株式市場への迅速なアクセス・ルートを確保する必要性が高まっていた。こうした流れを受けて、マザーズ上場基準では利益や純資産の額を要件に求めないなど、財務体質面で脆弱(ぜいじゃく)性が残る新興企業に早期上場への道を開いた。同時に、投資家保護の立場からは、上場後に企業による説明会の開催を義務づけるなど、市場としての健全性維持への配慮もみられた。

 なお、東証は、2013年(平成25)以降、マザーズとJASDAQ(ジャスダック)の二つの新興市場を運営してきたが、これは大阪証券取引所(大証。現、大阪取引所)との経営統合に伴い、それまで大証の傘下にあったJASDAQが東証に帰属した結果である。このため、マザーズとJASDAQの性格には重複する部分も少なくなく、おのおのの市場性格があいまいであるという問題が残された。そうしたなか、2022年(令和4)4月の東証再編により、マザーズ市場はJASDAQグロース市場とともに、新グロース市場へと吸収される形でその役割を終えた。

高橋 元 2023年1月19日]

『『新規上場ガイドブック(マザーズ編)』各年版(東京証券取引所。2013年版までは『マザーズ上場の手引き』)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マザーズ」の意味・わかりやすい解説

マザーズ
Market of the high-growth and emerging stocks; Mothers

東京証券取引所が 1999年 11月に新設した,ベンチャー企業向けの株式市場。アメリカのナスダック進出を契機に,日本でも市場間競争が進むと予想され,その対応策という意味合いがある。東証1部,2部の上場基準と比較して,大幅に基準が緩和され,創業まもない企業や,赤字でも成長が見込める企業であれば上場できることになった。一方で,年4回の決算発表をする四半期決算,年2回の会社説明会開催など,IR (投資家向け広報) を義務づけ,情報開示を徹底させて,投資家が自分でリスク判断できる環境を整えた。アジアなど海外の新興企業も上場できる。従来は担保不足のため銀行からの借入れがむずかしく,成長が阻害されがちだったベンチャー企業に,上場による資金調達の道を開き,情報通信やソフト開発など,企業の育成をあと押しする効果も期待されている。

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