翻訳|muff
主として婦人が手を暖めるために、その両端より手を差し込んで用いる筒状のもの。毛皮、毛織物、羽毛、ビロード、絹製のものに、刺しゅうやビーズ、レース、リボンなどを飾ったもの。15世紀のイタリアに出現し、当初は上流階級の人々の間で用いられたが、16世紀中期のフランスで一般に普及し始め、17、8世紀には全盛をみ、1790年代までは男性にも用いられた。これは保温のためよりも威厳を添えるためのものだった。17世紀初期には小形のものを片手で粋(いき)に持っていたのが、後半になると大形化し、胴のベルトからつるすようになった。女子も、アクセサリーとして年齢、階級、季節を問わずに用いていた。貴族のマフは毛皮や絹製だったが、庶民のものは粗末だった。18世紀には、小さなショルダー・ケープとそろいにすることが流行した。大きさは、両手がやっと入るものから、肘(ひじ)まですっぽり入るものまであり、形も円筒形、楕円(だえん)筒形、樽(たる)形などがあったが、19世紀には概して小形化し、1880年代までにはエレガントなものになった。現在ではパーティーなどで毛皮、ビロード、絹製のものなどがアクセサリーとして、また、厳寒地では毛皮や毛織地のものが防寒用として用いられている。
[田村芳子]
手の保護,防寒のために用いる両端の開いた円筒形の服飾品。ベルベット,毛皮などで作られる。15世紀にイタリアにあらわれ,その後,ヨーロッパ各地に普及したといわれる。初期のものは絹製で,ベルトに吊るしていた。17世紀には大きなマフが流行したが,18世紀になると小型になった。フランス革命までは男女ともに用いたが,後に女性専用のものとなった。おもに毛皮で作られたが,刺繡(ししゆう)やリボンで飾ったり,パッドを入れてふくらませたりした。19世紀には,ショールやケープ,ハンドバッグとともに外出の際の必携品となった。その後もおしゃれな女性の間で用いられたが,今日ではほとんど見られなくなった。
執筆者:池田 孝江
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