日本大百科全書(ニッポニカ) 「ままごと」の意味・わかりやすい解説
ままごと
ままごと / 飯事
女の子が食物調理のまねごとなどをする遊び。また人形遊びを交えたものがあり、お客さんごっこ、およばれごとなど日常家庭生活をまねた招客、交際、贈答などさまざまな遊び方がある。1830年(天保1)刊の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(喜多村信節(きたむらのぶよ)著)に、「まゝこととは小児の言葉に飯をまゝといふ。此戯(このあそび)は飯作り種々食物を料理する学びなればなり。女子のみにあらず」とあり、少女が主体の遊びであるが、ときには男の子も加わる。この遊びの起源は古く、古墳時代(3世紀~7世紀ごろ)の墳墓からも、一種のままごと道具として当時用いられたと推定されるろう石、滑石製模造品の日用具(鏡、櫛(くし)など)や機織り具(筬(おさ)、杼(ひ)など)が発掘される。平安時代には雛(ひいな)遊びにままごと道具が存在していたことを『紫式部(むらさきしきぶ)日記』などの古典が記している。江戸時代には木・竹製のままごと道具、土焼きの茶碗(ちゃわん)、徳利類、真鍮(しんちゅう)・銅製の餅網(もちあみ)などが登場したが、このほか石、草、土などの自然物玩具(がんぐ)を用いる風景は古くからあり、現在もみられる。明治時代にはブリキ製が現れ、鍋(なべ)、釜(かま)、まな板などをセットにしたものがつくられた。昭和時代にかけてアルミニウム、セルロイド製品が加わって種類が増えた。第二次世界大戦後はプラスチック製品が進出してきて、ままごと道具もキッチンセットなどの新型が出現。電池で本物そっくりに動く洗濯機や、ステンレス製の台所用品も出回っている。
[斎藤良輔]