マーダバ(その他表記)Mādhava

改訂新版 世界大百科事典 「マーダバ」の意味・わかりやすい解説

マーダバ
Mādhava

中世インド哲学者生没年は不詳。1350年ころ南インド,ビジャヤナガル王国宰相も務めた。別名ビドヤーラニヤVidyāraṇyaともいう。ベーダの注釈者として著名なサーヤナとは兄弟であり,ベーダーンタ学派中の不二一元論派に属し,少なくとも14の著作が帰せられている。主著は哲学概説として有名な《全哲学綱要(サルバダルシャナサングラハSarvadarśanasaṃgraha)》で,唯物論をはじめとして順次に自派の哲学に近い体系へと筆を進め,全部で15の哲学説を概説し,最後に自派の不二一元論叙述で終わっている。このほかビバラナ派で重視する《パンチャパーディカー・ビバラナ》の綱要書や,ビバラナ派の立場に立った韻文の入門書《パンチャダシー》,ミーマーンサー学説に対する韻文の綱要書《ジャイミニーヤ・ニヤーヤ・マーラー》と,それに対する散文の自注などが注目すべき作品である。彼は独創的な思想家ではなく,むしろ有能な綱要書作者であったが,これは当時の思想界などの一般的風潮でもあった。
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マーダバ
Mādhava

《マーダバの病因論》の著者として有名なインドの医者。700年ころの人で生没年は不詳。チャラカスシュルタバーグバタに次いでインド古典医学史上第4番目にあげられるが,前3者が《アーユル・ベーダ》体系の全体を論じたのに対し,マーダバははじめて〈病因論(ニダーナ)〉という一部門を詳述した。多くの点でチャラカとスシュルタに負ってはいるが,独自の見解もみられる。最近モイレンベルトG.J.Meulenbeldによる優れた研究書において本文といくつかの注釈書が英訳され,インド医学研究に欠くことのできない入門書になった。
インド医学
執筆者:


マーダバ
Mādhava

14世紀後半から15世紀前半に南インドのケーララ州で活躍した数学者,天文学者。生没年不詳。後の学者から〈天球を知る人〉とたたえられている。月の正確な位置の計算法を論じた《ベーヌ・アーローハVeṇuāroha》という作品が残っているが,後代の学者が伝える彼の業績のうち特に注目すべきものは,円周率と正弦関数を冪(べき)級数に展開したことである。これはグレゴリー,ニュートン,ライプニッツらによる展開式におよそ3世紀先行するものである。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーダバ」の意味・わかりやすい解説

マーダバ
まーだば
Mādhava

生没年不詳。1350年ころの、インド、ビジャヤナガル王朝の哲人宰相。多くの著作のなかでも『全哲学綱要』は諸哲学の通観的研究としてとくに名高い。この書では、自らの立場、不二一元論(ふにいちげんろん)派ベーダーンタ哲学を究極に、そしてこれともっとも対照的な思想である唯物論を対極に置き、その他の14の思想体系を両極との親疎関係に従って配列、各体系をそれぞれの典籍に基づいて客観的に叙述している。ベーダ注釈者として有名なサーヤナSāyana(?―1387)とは兄弟であるとされる。

[倉田治夫 2018年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マーダバ」の意味・わかりやすい解説

マーダバ
Mādhava

14世紀頃のインドの哲学者。『サルバ・ダルシャナ・サングラハ』の著者。不二一元論に属していたが,著書にはサーンキヤ説の影響が著しくみられる。ほかにミーマーンサーに関する "Jaiminīyan āyamālāvistara",ベーダーンタに関する "Pacadaśī"がある。

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