日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミアジル鉱」の意味・わかりやすい解説
ミアジル鉱
みあじるこう
miargyrite
銀(Ag)の硫塩鉱物の一つで、ときに銀の鉱石鉱物となる。低~中温熱水鉱脈鉱床中に産する。自形は単斜厚板状、六角形の輪郭をもつことがある。日本では、大分県速見(はやみ)郡山香(やまが)町(現、杵築(きつき)市山香町)馬上(ばじょう)鉱山(閉山)、群馬県利根(とね)郡片品(かたしな)村の根羽沢(ねばざわ)鉱山(閉山)のものが有名。方鉛鉱と同構造の高温変態は565℃以上で安定で、1998年に新鉱物cuboargyriteとして報告された。また2002年に三斜晶系のバウムシュタルク鉱baumstarkite(化学式Ag3(Sb,As)3S6)が発見され、少量成分を無視すればAgSbS2とは同質三像関係にある。方鉛鉱とは互いに少量ずつ固溶しあう部分的な固溶系が成立し、Agを含む方鉛鉱を総称して含銀方鉛鉱ということがある。英名中のmiはminor(小さい、少ない)を意味し、他の銀の硫塩鉱物より銀含量の低いことによって命名された。
[加藤 昭 2018年10月19日]