改訂新版 世界大百科事典 「ミュールジカ」の意味・わかりやすい解説
ミュールジカ
mule deer
Odocoileus hemionus
5本以上に枝分れし長さ78cmに達するみごとな角をもつ北アメリカ産の中型のシカ。偶蹄目シカ科の哺乳類。同属のオジロジカに似るが,尾が短く,耳は長い。体色は,夏毛では赤色あるいは黄色みをおびた淡褐色,冬毛では褐色あるいは橙色みをおびた灰色。四肢と腹面は白色。ふつう黒色の先端部を除いた尾と臀部(でんぶ)は白色。体長120~190cm,肩高90~105cm,尾長10~26.5cm,体重50~215kg。カナダからメキシコまでの北アメリカ中西部の山岳地帯に生息し,春から夏を山の上で,秋から冬をふもとの半砂漠地帯で過ごす。水なしで数日間を過ごすことができる。ふもとではしばしば雌雄が集まって大群をつくり,春に山にもどる途中で雌は1子を生む。子には白斑がある。オグロジカO.h.columbianus(英名black-tailed deer)は本種の1亜種で,尾の全体が黒い。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報