改訂新版 世界大百科事典 「カミツキガメ」の意味・わかりやすい解説
カミツキガメ
snapping turtle
snapper
Chelydra serpentina
あごの力が強いカミツキガメ科Chelydridaeの淡水性カメ。北アメリカのロッキー山脈以東のカナダ南部から南アメリカ北部に生息している。甲長30~47cm,体重16~40kgの大きな淡水性のカメで,頭が大きくて尾が長く四肢が発達している。腹甲は極端に小さく裏側を見るとほとんど四肢がはみ出している。名前のとおりかみつく力が強く,陸上では攻撃的なので取扱いに注意を要する。ふだんは水中で過ごし,6月ごろ上陸して水辺の日当りのよい場所に深さ15cmほどの穴を掘り,12~50個ほどを産卵する。子ガメは90日ほどで孵化(ふか)する。貪食(どんしよく)で,餌はおもに動物質,魚類,甲殻類,両生類のほか水鳥の雛もとらえる。近縁種の一回り大きなワニガメMacroclemys temminckii(英名alligator snapper)は甲長40~60cm,最大は78cm,体重200kgを超える大型で,アメリカ合衆国南東部の河川や湖沼に分布している。本種は“頭脳的な”魚とりで知られ,小魚を誘うのに手のこんだ舌の擬餌(ぎじ)を使う。まず水底に横たわって口を開け,餌のように見える舌を動かし魚を誘う。魚が接近すると舌はピンク色に変わってミミズのように見え,魚がつつこうとするところをとらえるのである。アジア南部の山地の渓流にすむオオアタマガメPlatysternon megacephalumは甲が平たく,硬い頭部は甲長の1/2ほどもある。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報