改訂新版 世界大百科事典 「ムラサキオモト」の意味・わかりやすい解説
ムラサキオモト
boat lily
Rhoeo spathacea Stearn(=R.discolor (L'Her.) Hance)
ツユクサ科の常緑多年草で,中央アメリカ,西インド諸島に1種だけが分布する。葉は多肉質の披針形で,長さ20~30cm,幅3~4cm,表は暗緑色だが,裏は暗紫色で美しい。茎は短く,形態がオモトに似て葉裏が紫のところから和名がついた。シキンラン(紫錦蘭),レオともいう。開花期は夏で,葉腋(ようえき)に密な散形花序をなす。暗紫色の多肉質の2枚の苞片に包まれて,白色小花を多数つける。葉の表皮は原形質分離など生理学実験の材料に使われる。1816年(文化13)に渡来した。鉢植えではあまり分枝しないが,夏花壇に植えると群生し,強光線下では紫色がいっそうさえて美しい。頂芽を切ると基部から新芽が出るので,挿芽でふやす。葉に淡黄色の条斑の入る園芸品種cv.Variegataがあるが,斑(ふ)の入り方に変異が多く,鮮明なものを選択しないと形質が退化する。水をひかえれば5~8℃で越冬する。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報