出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
内臓に脂肪が過剰にたまり、それに加えて脂質異常、高血圧、高血糖などの状態が複数重なることにより、動脈硬化による心筋梗塞(こうそく)などの可能性が増す状態。代謝症候群、メタボリックシンドロームmetabolic syndrome、内臓脂肪症候群などともいう。
2005年(平成17)4月、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本内科学会、日本腎臓(じんぞう)学会、日本血栓止血学会の八つの学会がメタボリック症候群の診断基準をつくった。それによると、へそ周りを測ったウエスト周囲径が、男性は85センチメートル以上、女性は90センチメートル以上であることに加え、
(1)血中脂質 中性脂肪150mg/dL(ミリグラム/デシリットル)以上か、高比重リポタンパク(HDL)コレステロール40mg/dL未満(脂質異常)
(2)血圧 最高血圧が130mmHg(ミリメートル水銀柱)以上か最低血圧が85mmHg以上(高血圧)
(3)血糖 空腹時の血糖値が110mg/dL以上(高血糖)
のうちの二つが当てはまるとメタボリック症候群としている。血中脂質、血圧、血糖の数値は、ともに病気というほど高くはないが、肥満のうえに複数重なると危険が高まる、との警告である。こうした人たちは、X線CT検査をすると、内臓に厚く脂肪が取り巻いている、といわれている。
ところで、厚生労働省は2006年5月、初めてのメタボリック症候群調査を発表した。肥満+血中脂質、血圧、血糖の基準のうちの二つが該当する「強く疑われる者」と、一つが当てはまる「予備軍」の率は、40歳代以降の男性では50%以上、女性も20%以上になっている、とのショッキングな内容であった。また、メタボリック症候群が強く疑われる者は約940万人、予備軍は約1020万人で、あわせて1960万人とされた。
厚生労働省は2008年4月から医療保険者(市町村の国民健康保険組合や企業の健康保険組合など)にメタボリック症候群の早期発見、指導を義務づける「特定健診・保健指導」制度を創設した。40歳から74歳までの被保険者を健診し、リスクに応じた保健指導をする。2015年度には糖尿病などの患者や予備軍を25%減らす目標を掲げている。
[田辺 功]
『下村伊一郎・松沢佑次編『メタボリックシンドローム 病態の分子生物学』(2005・南山堂)』▽『松澤佑次監修、船橋徹・中村正編『やさしいメタボリックシンドロームの自己管理』(2006・医薬ジャーナル社)』▽『横越英彦編『メタボリック症候群と栄養』(2007・幸書房)』▽『金川克子他編『新しい特定健診・特定保健指導の進め方――メタボリックシンドロームの理解からプログラム立案・評価まで』(2007・中央法規出版)』▽『結城康博著『入門 特定健診・保健指導――メタボ対策の制度を知ろう』(2007・ぎょうせい)』▽『近藤達也・山西文子監修、加藤規弘編『メタボリックシンドローム概論』(2008・メヂカルフレンド社)』
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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