出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
(1)Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III) final report. Circulation. 2002;106:3143-3421.
(2)Stefanick ML, Mackey S, Sheehan M, et al. Effects of diet and exercise in men and postmenopausal women with low levels of HDL cholesterol and high levels of LDL cholesterol. N Engl J Med. 1998;339:12-20.
(3)Thompson GR, Lowenthal R, Myant NB. Plasma exchange in the management of homozygous familial hypercholesterolaemia. Lancet. 1975;1:1208-1211.
(4)Kroon AA, Aengevaeren WR, van der Werf T, et al. LDL-Apheresis Atherosclerosis Regression Study (LAARS). Effect of aggressive versus conventional lipid lowering treatment on coronary atherosclerosis. Circulation. 1996;93:1826-1835.
(5)Dujovne CA, Ettinger MP, McNeer JF, et al. Efficacy and safety of apotent new selective cholesterol absorption inhibitor, ezetimibe, in patients with primary hypercholesterolemia. Am J Cardiol. 2002; 90: 1092.
(6)Knopp RH, Gitter H, Truitt T, et al. Effects of ezetimibe, a new cholesterol absorption inhibitor, on plasma lipids in patients with primary hypercholesterolemia. Eur Heart J. 2003; 24: 729.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
血中のコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)が増加する状態を高脂血症といいます。高脂血症は動脈硬化の原因となりますが、血中のコレステロールには次に述べるように
コレステロールもトリグリセリドも水に溶けないので、特殊な蛋白質(アポ蛋白と呼ばれている)に付着して血液中を運ばれています。このコレステロールやトリグリセリドとアポ蛋白の複合体をリポ蛋白といいます。
リポ蛋白にはいくつかの種類があり、比重によりVLDL(超低比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)などに分類されています。コレステロールには善玉と
LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し動脈硬化を起こすので、LDLコレステロールを悪玉コレステロールと呼びます。逆に、HDLは血管や組織に蓄積したコレステロールを引き抜いて運ぶリポ蛋白なので、HDLコレステロールを善玉コレステロールと呼んでいます。トリグリセリドは主にVLDLによって運ばれています。
血中のLDLコレステロールやトリグリセリドが増加すると動脈硬化が起こりやすくなります。とくに家族性高脂血症では
一般には、高カロリー高脂肪の食事と運動不足などの生活習慣が一番多い原因です。しかし、遺伝性の脂質異常症も知られています。なかでも家族性高コレステロール血症は日本人では500人に1人の高い頻度でみられる遺伝性の疾患です。そのほかにも家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症などの遺伝性高脂血症があります。遺伝性の低HDL血症もありますが、極めてまれですので一般には心配する必要はありません。
多くの場合、症状はないので、血液検査で初めてわかることがほとんどです。家族性高コレステロール血症ではアキレス
とくにアキレス腱肥厚は最も多くみられる症状で、アキレス腱の厚みが1㎝以上あって血中コレステロール値の高い場合は、家族性高コレステロール血症である可能性が高いと考えられます。家族性Ⅲ型高脂血症でも典型的な場合は、腱黄色腫や
血液検査で血中のコレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロールの値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。悪玉と呼ばれるLDLコレステロールの値はこれらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。脂質異常症の診断基準は表20に示すとおりです。
脂質異常症を治療する目的は動脈硬化の予防なので、禁煙など、脂質異常症以外の動脈硬化危険因子の治療を同時に行うことが重要です。また、治療の目標値も他の危険因子をいくつもっているかにより異なります(表21)。
脂質異常症の原因の多くは生活習慣なので、その改善が第一です。食事療法は血清脂質の是正とともに冠動脈硬化の危険因子である糖尿病、高血圧、肥満の治療も目的とするものです。まず、第一段階では、総エネルギーとともに栄養素配分を適正化します(表22)。この食事療法で目標値にならない場合はより厳しい食事療法を行う必要があるので、医師や栄養士に相談します。
適正体重の維持(体重㎏/(身長m)の2乗=22を標準とする)、腹囲の適正化(男性85㎝未満、女性90㎝未満)、身体活動の増加(速歩、ジョギング、水泳、サイクリングなどを1日30~60分、週3回以上)も重要です。
生活習慣の是正を3~6カ月続けても目標値に達しない場合は薬物療法を行います。ただし家族性高脂血症は早くから薬物療法を行う必要があります。
現在、脂質異常症治療薬(高脂血症薬)にはいくつかの種類がありますが、高コレステロール血症にはHMGCoA還元酵素阻害薬(一般にスタチンと呼ばれている)が最も多く使われています。この種類の薬はコレステロールの合成を抑制するものです。その他にもコレステロールの吸収阻害薬やレジンと呼ばれる陰イオン交換樹脂やプロブコール、ニコチン酸誘導体も使われます。
高トリグリセリド血症にはフィブラート系薬物のベザフィブラートやフェノフィブラートが有効です。また、EPA(エイコサペント酸エチル)はトリグリセリドを下げる薬ですが、血管に直接はたらいて抗動脈硬化作用を示すともいわれています。
これらの薬はいずれも副作用は比較的少ないものですが、まれに筋肉や肝臓の障害などを起こすことがあるので、医師の指示に従ってきちんと服用してください。
脂質異常症は、動脈硬化の予防が目的です。無症状であっても正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談してください。一般内科あるいは内分泌・代謝科が担当の診療科です。
糖尿病の基礎的理解、狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞
川上 正舒
血液中の総コレステロールやLDLコレステロール、中性脂肪が増加したり、HDLコレステロールが低下した状態をいいます。将来
遺伝による
一般に無症状で、検査で発見されます。したがって、小児期の脂質検査は重要です。ただし、家族性高コレステロール血症では、まぶたの黄色腫で発見されることもあります。また、動脈硬化の進行が早く、30代で心筋梗塞を起こすことがあります。
朝食を食べずに採血し、総コレステロール220㎎/㎗以上、LDLコレステロール140㎎/㎗以上、HDLコレステロール40㎎/㎗未満、中性脂肪140㎎/㎗以上のいずれかの場合、脂質異常症と診断します。次は、原発性高脂血症かどうかが重要ですので、親が同様の検査結果かどうかを確認します。
LDLコレステロール高値、中性脂肪が正常で、肥満がない場合は、家族性高コレステロール血症が疑われます。家族性複合型高脂血症では、LDLコレステロールと中性脂肪の高値があり、肥満傾向がある場合が多いです。原発性高脂血症でない場合は、肥満症、糖尿病に伴うものが多いので、その検査が必要になります。
原発性高脂血症の場合は、食事療法(コレステロール制限)や薬物療法が必要な場合もあります。その他の脂質異常症は肥満症に伴うことが多いので、肥満の治療に準じて対応します。
家族性高コレステロール血症が疑われた場合は、専門医療機関での検査、治療が必要です。その他の脂質異常症は、日常の生活習慣の改善が重要です。肥満があれば、その改善を目指しましょう。
菊池 透
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
従来、中性脂肪(トリグリセライド、トリグリセリド)数値、コレステロール数値、あるいはHDLコレステロール(高比重リポタンパクコレステロール)数値の異常を高脂血症と総称していたが、HDLコレステロール数値は分けて考えるべきという指摘と、欧米の慣習を取り入れて脂質異常症とされた。中性脂肪、コレステロール数値の異常については、高脂血症とよんでもよい。正常では、血清1デシリットルにつき、中性脂肪は30~150ミリグラム、コレステロールは150~220ミリグラム、LDLコレステロール(低比重リポタンパクコレステロール)は50~140ミリグラム程度存在する。したがって、これらの値を超えたときに高脂血症という。HDLコレステロールは血清1デシリットルにつき40ミリグラム未満の場合を異常とする。
一般に、一次性(原発性)と二次性(続発性)とに分けられる。一次性は家族性に発生することが多く、二次性では肥満症、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺(せん)機能低下症、閉塞(へいそく)性黄疸(おうだん)などから発生する。一次性では中性脂肪またはコレステロールの代謝処理障害から発生することが多く、角膜辺縁に白色輪(角膜輪)が、皮膚にはコレステロールなどの沈着(黄色腫(おうしょくしゅ))がみられたり、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、壊疽(えそ)などの発生原因の一つになっている。
治療の基本は食事療法で、食事量の調節、とくに標準体重1キログラム当り25~30キロカロリーとし、アルコールや糖質の過剰摂取を慎む。カイロミクロン(乳糜(にゅうび))が増えたための中性脂肪の増加であれば、むしろ脂肪の制限が必要である。二次性の場合には、まず原病の治療が基本である。HDLコレステロール数値の異常は、喫煙、運動不足、肥満が問題で、これらを改善すべきである。薬物療法もかなり有効で、中性脂肪の異常にはフィブラート、ニコチン酸誘導体、デキストラン硫酸ナトリウムなどが用いられ、コレステロールの異常には各種スタチン、メリナマイド、プロブコール、コレスチラミン、エゼチミブなどが使われる。これらが無効であれば、血漿(けっしょう)交換や外科手術も行われる。血清脂質の管理が順調であれば、動脈硬化の進行は抑えられる。
[中村治雄]
(石川れい子 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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