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脂質異常症 ししついじょうしょう

知恵蔵の解説

脂質異常症

血液中に含まれる脂肪の量が、多すぎる、あるいは少なすぎるといった異常を示す病気。無症状のまま進行し、動脈硬化が起こって心筋梗塞脳梗塞をきたすことがある。2007年以前は、高脂血症と呼ばれていた。主な原因は、食生活、喫煙、運動不足などの生活習慣にある。厚生労働省は、生活習慣病の一つとし、特定健康診断に脂質検査を設けてLDLコレステロールHDLコレステロール中性脂肪を必須項目にするなどの施策を展開しているが、2010年に実施された国の調査では脂質異常症が疑われる人は男性の22.3%、女性の17.7%に上っており、なお増加傾向にある。
血液中にどの脂肪が多い(少ない)かによって、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症の3つのタイプに分けられる。診断基準は、空腹時の採血で、LDLコレステロール値140mg/dL以上が高LDLコレステロール血症、HDLコレステロール値40mg/dL未満は低HDLコレステロール血症、トリグリセリド150mg/dL以上は高トリグリセリド血症とされている。
LDLコレステロールは血管内皮に付着しやすい性質があり、HDLコレステロールは血液中のコレステロールを回収して肝臓に戻す働きを持つ。トリグリセリドは中性脂肪の一種で内臓脂肪として蓄えられやすい。また、トリグリセリドが増えると、LDLコレステロールが増え、HDLコレステロールが減るため、結果的に動脈硬化を助長することになる。
治療は、禁煙、食生活の改善、適正体重の維持と運動量の増加を柱とする生活習慣改善から始める。一定期間を経て効果がみられなかった場合に投薬が検討される。なお、先天的な代謝異常などに起因する家族性脂質異常症の場合は、生活習慣改善での効果が期待できないため最初から薬物療法を行うことになる。

(石川れい子  ライター / 2013年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

ししついじょう‐しょう〔シシツイジヤウシヤウ〕【脂質異常症】

血液中のコレステロール中性脂肪など脂質の値に異常がある状態。以前は「高脂血症」とよばれていた。この状態を放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞脳梗塞などさまざまな生活習慣病危険性が高まる。日本動脈硬化学会が平成19年(2007)に発表した指針では、血清1デシリットル中、中性脂肪が150ミリグラム以上、LDLコレステロール悪玉)が140ミリグラム以上、HDLコレステロール善玉)が40ミリグラム未満の場合とされている。脂質代謝異常症

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

食の医学館の解説

ししついじょうしょう【脂質異常症】

《どんな病気か?》


〈自覚症状がないまま進行し、動脈硬化、心筋梗塞をまねく〉
 血液に含まれる成分はたくさんありますが、脂質もその1つです。そしてその脂質には、コレステロール、トリグリセリド(中性脂肪(ちゅうせいしぼう))、リン脂質、遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)の4つの種類があります。
・4つの脂質の働き
●コレステロール=骨格をつくり、ホルモンや胆汁酸(たんじゅうさん)のもとになる。
●トリグリセリド=エネルギー源として皮下脂肪(ひかしぼう)に蓄えられる。
●リン脂質=細胞膜(さいぼうまく)の表面をつくる材料になる。
●遊離脂肪酸=蓄積されないエネルギー源。
 これらのうち、1つでも正常値より高い状態にある場合が、脂質異常症です。
 とくに、コレステロール、トリグリセリドのうちでも、
●LDLコレステロール=140mg/dl以上
●HDLコレステロール=40mg/dl未満
●トリグリセリド=150mg/dl以上
のいずれかに該当した場合に、脂質異常症と診断されます。
 脂質異常症は、遺伝因子、食事などの環境因子によって、また肥満や糖尿病(とうにょうびょう)、腎疾患(じんしっかん)などの1症状としてみられます。
 自覚症状がないため、検査を受けてはじめてわかるというケースが多く、そのまま知らずに進行してしまうと、動脈硬化(どうみゃくこうか)、狭心症(きょうしんしょう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳梗塞(のうこうそく)、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)を引き起こす原因となってしまいます。とくに脂質異常症は動脈硬化の最大の原因です。
 生活習慣病の複合的な発症を予防するためにも、各検査項目の基準値をつねに維持するよう、心がけましょう。
 脂質異常症の予防も改善も、食事療法が中心です。そして、同時に運動をすることによって、さらに効果が得られます。
 運動は、ほかの生活習慣病と同様に、とくに脂肪を燃焼させることがたいせつなので、有酸素運動(ゆうさんそうんどう)が効果的です。
 脂肪は運動開始後15~20分後に燃焼が大きくなるといわれているので、最低でも15分以上、運動を継続する必要があります。

《関連する食品》


〈食物繊維を積極的に摂取し、タイプ別に対処〉
 脂質異常症に好ましい食生活は、適正なカロリーコントロールと適度な有酸素運動を基本に、検査結果に基づいたタイプ別の対処が必要になります。
 コレステロールが多いタイプでは、脂肪の摂取を制限し、食物繊維や植物性たんぱく質を多くとること、トリグリセリドが多いタイプでは、蔗糖(しょとう)、果糖、アルコールの摂取を制限し、不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)を積極的に摂取すること、そしてHDLコレステロールが低いタイプは、糖質の摂取を制限することがポイントです。
○栄養成分としての働きから
 このようなポイントをふまえたうえで、脂質異常症に効果的なのが食物繊維を多く含む食品です。水溶性の食物繊維は、コレステロールを便といっしょに排泄(はいせつ)するため、コレステロール値を下げてくれる作用があります。ゴボウやオクラ、切り干しダイコンなどの野菜、シメジなどのキノコ類、リンゴやバナナなどのくだもの類、こんにゃくやワカメなどを積極的に摂取しましょう。
 不飽和脂肪酸もコレステロール値を下げる作用があります。とくに近年話題になったIPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は効果的で、アジやイワシ、カツオやサンマ、サバなどの青背の魚に多く含まれています。
〈抗酸化食品がコレステロールから動脈壁をまもる〉
 コレステロールを動脈壁(どうみゃくへき)に付着させないように、抗酸化食品(こうさんかしょくひん)を摂取することも必要です。ビタミンA、C、Eやカテキン、セサミンなどの抗酸化物質を含む食品が効果的です。ビタミンAはニンジン、ピーマンなどの緑黄色野菜のほか、ウナギにも多く含まれます。ビタミンCはイチゴやサツマイモ、ビタミンEはカボチャやアーモンドなどから摂取することができます。また、カテキンは赤ワイン、緑茶、セサミンはゴマが代表格です。
〈内臓肉、魚卵、たまごは高コレステロール食品〉
○注意すべきこと
 肉類、とくにレバーなどの内臓肉、いくら、かずのこ(生)、たらこ(生)、すじこなどの魚卵類、たまご類などのコレステロールの多い食品、ケーキやクッキーなどの糖質の多い食品、脂身(あぶらみ)の多い肉やバターなどの動物性油脂を多く含む食品などの摂取をひかえましょう。そのほか、イカ(スルメ、生・焼き・くんせい)、ヤツメウナギ(干し)、シシャモ(生干し・生)、牛(腎臓)、ウニ(生ウニ)、しらす干し、ホタルイカ(生)などもコレステロールを多く含む食品です。
 また、生活水準の向上、豊かな食生活にともなって増加傾向だったが、この10年間では、日本人のコレステロール値は横ばい状態です。
 しかし生活習慣病の低年齢化を防ぐためにもコレステロールの摂取量には気をつけた食生活を心がけることがたいせつです。

出典 小学館食の医学館について 情報

大辞林 第三版の解説

ししついじょうしょう【脂質異常症】

LDL コレステロール値が高く、 HDL コレステロール値が低い状態。心筋梗塞こうそくや狭心症など動脈硬化性に罹患りかんするリスクが高くなるとされる。 〔2007 年(平成 19)4 月、日本動脈硬化学会が診断基準を改定し、同時にこれまで広く使われてきた「高脂血症」という疾患名を「脂質異常症」と置き換えることを発表〕 → LDL コレステロール HDL コレステロール

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

脂質異常症
ししついじょうしょう
dyslipidemia

従来、中性脂肪(トリグリセライド、トリグリセリド)数値、コレステロール数値、あるいはHDLコレステロール(高比重リポタンパクコレステロール)数値の異常を高脂血症と総称していたが、HDLコレステロール数値は分けて考えるべきという指摘と、欧米の慣習を取り入れて脂質異常症とされた。中性脂肪、コレステロール数値の異常については、高脂血症とよんでもよい。正常では、血清1デシリットルにつき、中性脂肪は30~150ミリグラム、コレステロールは150~220ミリグラム、LDLコレステロール(低比重リポタンパクコレステロール)は50~140ミリグラム程度存在する。したがって、これらの値を超えたときに高脂血症という。HDLコレステロールは血清1デシリットルにつき40ミリグラム未満の場合を異常とする。
 一般に、一次性(原発性)と二次性(続発性)とに分けられる。一次性は家族性に発生することが多く、二次性では肥満症、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺(せん)機能低下症、閉塞(へいそく)性黄疸(おうだん)などから発生する。一次性では中性脂肪またはコレステロールの代謝処理障害から発生することが多く、角膜辺縁に白色輪(角膜輪)が、皮膚にはコレステロールなどの沈着(黄色腫(おうしょくしゅ))がみられたり、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、壊疽(えそ)などの発生原因の一つになっている。
 治療の基本は食事療法で、食事量の調節、とくに標準体重1キログラム当り25~30キロカロリーとし、アルコールや糖質の過剰摂取を慎む。カイロミクロン(乳糜(にゅうび))が増えたための中性脂肪の増加であれば、むしろ脂肪の制限が必要である。二次性の場合には、まず原病の治療が基本である。HDLコレステロール数値の異常は、喫煙、運動不足、肥満が問題で、これらを改善すべきである。薬物療法もかなり有効で、中性脂肪の異常にはフィブラート、ニコチン酸誘導体、デキストラン硫酸ナトリウムなどが用いられ、コレステロールの異常には各種スタチン、メリナマイド、プロブコール、コレスチラミン、エゼチミブなどが使われる。これらが無効であれば、血漿(けっしょう)交換や外科手術も行われる。血清脂質の管理が順調であれば、動脈硬化の進行は抑えられる。[中村治雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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