フランス北東部,ロレーヌ地方の中心でモーゼル県の県都。ドイツ読みではメッツ。人口12万3776(1999)。モーゼル川沿いにあり,重要な工業地域に近い。交通の要衝で,行政,商業(国際市),文化(大学),軍事(師団駐屯地),法律,宗教の中心地。機械,自動車,精油,火力発電等の工業が盛んである。ガリアのメディオマトリキ族Mediomatriciの主都に由来し,中世には司教座都市,神聖ローマ帝国下では自由都市となり,ケルンと並び栄えた。1552年フランス領,普仏戦争(1870-71)より第1次世界大戦末までドイツ領,第2次世界大戦下も一時ドイツ領となるなど,独仏抗争の地であった。
執筆者:大嶽 幸彦
同市では,勝利の女神像,家形石碑など多くのガロ・ロマン時代の遺物が発掘され,ローマ時代の浴場跡につくられたガロ・ロマン考古学博物館に収蔵されている。4世紀のバシリカ跡に建てられたサン・ピエール・オ・ノナン教会(7世紀)は,創建当時の内陣障柵を保存する。カロリング朝期には司教ドロゴの下で写本画,象牙彫で重要な〈メッス派〉の工房が栄えた。サンテティエンヌ大聖堂(13~14世紀)はロレーヌとシャンパーニュ両地方の伝統を継ぐゴシック建築で,身廊の高さ(42m)はアミアン大聖堂に匹敵する。総面積が7000m2にも及ぶステンド・グラス(大部分14~16世紀)も名高い。ほかに,典型的なシャンパーニュ・ゴシックのサン・バンサン教会(13~18世紀),方形内陣八角堂のテンプル騎士団礼拝堂(12世紀),中世の城門等が残る。
執筆者:岸本 雅美
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[自然]
東端にあるボージュ山地を除くと,地質的にはパリ盆地の沖積層に続くロレーヌ台地が大部分を占め,モーゼル川とムーズ川沿岸には砂岩質,泥灰岩質,粘土質の地層が交互する。ロレーヌはパリから東へメッス,ザールブリュッケンを経てフランクフルトへ向かう東西軸と,ローヌ川,ソーヌ川,モーゼル川の南北軸が交差する重要な地点にある。メッスを中心とするロレーヌ北部はローマの影響を受け,一方,ナンシーを中心とするロレーヌ南部はボージュ山地で隔てられたアルザスとの結びつきが強い。…
※「メッス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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