メルフィ法典(読み)メルフィほうてん(その他表記)Constitutioni di Melfi

改訂新版 世界大百科事典 「メルフィ法典」の意味・わかりやすい解説

メルフィ法典 (メルフィほうてん)
Constitutioni di Melfi

神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世(1194-1250)が1231年に南イタリアのメルフィで制定したシチリア王国の勅法集成。《皇帝の書Liber Augustalis》とも呼ばれる。フリードリヒ2世は,皇帝ハインリヒ6世とノルマンのシチリア王女コンスタンツェとのあいだに生まれ,3歳でシチリア王に即位,のちに皇帝となった(1220戴冠)。彼はノルマン王朝を受け継ぎつつビザンティン帝国の影響のもとに集権的国家を建設し,それを足場として帝権の強化を企てた。メルフィ法典は,すでにノルマン王朝の国王,とくにルッジェーロ2世の法や,フリードリヒ自身の発布した法を集めたものである。ローマ法に基礎を置いて作成された中世最初の法典であり,近世ヨーロッパ諸国の法典編纂の先駆をなす。フリードリヒはみずからユスティニアヌスのようなローマ皇帝になぞらえ,〈法を授与する者〉としての統治者になろうとした。この法典の有名な序文によれば,最初の人類が神の与えた命令(法)を侵犯したことが原罪であり,そのために統治者による救済(法=正義の実現)が必要とされる。こうして必要が統治者を生み出すことになる。正義の実現が統治者の存立根拠であるから,正義を実現するための方法は統治者の手に集中しなければならない。こうして都市自治が圧迫され,中央集権的国王裁判組織が確立する。訴訟法の改革・合理化,裁判官僚制の整備が行われた。このため,メルフィ法典はときに〈近代官僚制出生証書〉と呼ばれる。しかし,フリードリヒはビザンティン帝国の例にならい,教会をもその中に包摂した集権的国家の建設を目ざしたのであり,一種の国家宗教が同時に成立したこともみのがせない。異端は教会に対する罪にとどまらず,神と国王の支配権に対する罪であった。なお,法典は3巻からなり,第1巻は公法(王国の基本法,官吏法),第2巻は民事,刑事の訴訟法,第3巻は封建法,身分法,刑法などを扱っている。
ローマ法の継受
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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