モンサント(読み)もんさんと(その他表記)Monsanto Co.

共同通信ニュース用語解説 「モンサント」の解説

モンサント

遺伝子組み換え種子の世界最大手企業。農業用にトウモロコシや大豆、小麦といった幅広い種子を生産、販売する。本社は米ミズーリ州セントルイスで66カ国に事業所を展開。日本法人は東京にあり、茨城県河内町に研究用の農場を構える。2015年8月期決算は売上高が150億100万ドル(約1兆5400億円)、従業員は全世界で約2万1千人。(ニューヨーク共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンサント」の意味・わかりやすい解説

モンサント
もんさんと
Monsanto Co.

かつて存在したアメリカの化学会社。1933年モンサント・ケミカル・カンパニーとしてデラウェア州で設立されたあと、1964年に社名がモンサントとなる。2000年にスウェーデンの医薬会社ファルマシア・アンド・アップジョンPharmacia & Upjohn, Inc.と合併し、ファルマシアPharmacia Corp.となった。モンサントの社名は、分社化された農業化学品部門が引き継いでファルマシアの子会社となり、2003年にファルマシアがファイザーPfizer Inc.に買収されたため、ファイザーの子会社として存続していたが、2018年にドイツの総合化学メーカー、バイエルに買収された。

 モンサントの起源は、1901年にクイーニーJohn Francis Queeny(1859―1933)がサッカリン製造の目的で設立したモンサント・ケミカル・ワークス(ミズーリ州法人)である。社名にあるモンサントとは創立者クイーニーの妻オルガの旧姓。1917年にアスピリンの製造を開始し、社名を変えながらも、アスピリンの製造においては1980年代まで全米最大であった。モンサントは広範な化学品を世界的に開発・製造・販売するメーカーであった。1980年代以降のおもな製品部門は、ナイロンアクリルなどの化学繊維プラスチックや特殊樹脂などの合成樹脂を扱う化学品部門、除草剤などを扱う農業用製品部門、人工甘味料など食品材料を生産する部門、胃腸薬鎮痛薬などさまざまな薬を扱う医薬品部門であった。

 1990年代に入ると、薬品、遺伝子組換え食品などのライフサイエンス分野に対する将来性・収益性が期待されるなか、バイオテクノロジーの開発に巨額投資をした。それと引き換えに1997年には化学品部門を分離して、従来型の総合化学メーカーからバイオテクノロジーを利用したライフサイエンス企業へと業態転換を果たした。農業用製品部門の主力商品である「ラウンドアップRoundup」はきわめて強い殺草力をもつ除草剤である。この除草剤と遺伝子組換えの技術を用いて開発されたラウンドアップに耐性をもつダイズ種子「ラウンドアップレディRoundup Ready」とのセット販売により、同社は大きな成功を収めた。アメリカにおけるラウンドアップレディの作付面積シェアは、1998年には30%に達した。しかしその後、医薬品部門の開発した抗炎症剤「セレブレックスCelebrex」が大ヒット(1999年の売上げは15億0700万ドル)となったものの、農業部門の業績は悪化した。その理由は、アメリカ農業の不振に伴う農薬販売の低迷、同社種子の独占禁止法違反による提訴、遺伝子組換え農産物に対する反発や規制強化などの影響から、農業化学製品の売上げが低迷したためである。そこで1999年12月、モンサントはスウェーデンの医薬品大手ファルマシア・アンド・アップジョンとの合併に踏み切り、2000年4月社名をファルマシアに改称した。農業化学部門は分社化して「モンサント」の社名を引き継ぎ、ファルマシアの子会社となった。合併前のモンサントの売上高は75億1400万ドル(1998)であった。

 2003年にファルマシアはファイザーに約510億ドルで買収された。分社化されたモンサントはその後もM&A(合併・買収)を進め、2009年度(8月末)の売上高は117億2400万ドル、純利益は21億0900万ドルであった。

 日本では、日本法人の日本モンサント(1957年設立)がある。1952年(昭和27)にモンサント49%、三菱(みつびし)化成(現、三菱ケミカル)51%の出資によるモンサント化成(1958年に三菱モンサント化成に改称)が設立されたが、1990年に合弁は解消された。

[萩原伸次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンサント」の意味・わかりやすい解説

モンサント
Monsanto Company

アメリカ合衆国の総合化学会社。創業は 1901年であるが,1933年モンサント・ケミカルとして改組設立され,1964年社名をモンサントに変更。この間各種企業を買収して多角化をはかり,1960年代にはフラミンゴ・フォエム,ケエムストランド,ゲーリング・プラスチック,フィッシャー・ガバナーなど多数の企業を買収,1970年代はその整理統合を進めた。海外活動も活発に行なった。事業内容は,農業用化学製品部門(除草剤,殺虫剤,肥料,飼料添加剤),工業用化学製品部門(洗剤,薬品,可塑剤),化学中間製品部門(エチレンなど石油化学製品,染料,香料,バイオテクノロジー,石油・ガス開発など),食品材料部門(低カロリー甘味料など)など。1990年代後半には農業用を主とするバイオテクノロジー部門を強化するとともに,1997年には化学品部門を子会社化した。さらに 2000年には低カロリー甘味料のヨーロッパ事業部門,ニュートラスイートとアスパルテームを日本の味の素へ売却。2000年代後半から生命科学・医薬品事業への特化をはかったが,2018年,ドイツの製薬大手バイエルに買収され消滅した。

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