人工甘味料(読み)ジンコウカンミリョウ

デジタル大辞泉 「人工甘味料」の意味・読み・例文・類語

じんこう‐かんみりょう〔‐カンミレウ〕【人工甘味料】

天然には存在せず、人工的に合成して作った甘味料食品衛生法によって規定される。アスパルテームスクラロースなどが知られる。合成甘味料

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精選版 日本国語大辞典 「人工甘味料」の意味・読み・例文・類語

じんこう‐かんみりょう‥カンミレウ【人工甘味料】

  1. 〘 名詞 〙 甘い味の合成化学製品。ソルビトールサッカリンキシリトールなどがある。人工甘味質。〔危険な食品(1968)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人工甘味料」の意味・わかりやすい解説

人工甘味料
じんこうかんみりょう

人工的に化学合成された甘味料。食品添加物として使用を認められている非糖質系甘味料の合成甘味料と、糖質系甘味料の糖アルコールがこれに相当する。

 先進国における砂糖資源の不足と過食による肥満を起因とする生活習慣病が問題となり、砂糖にかわる低カロリー甘味料の開発が進んだ。合成甘味料は、砂糖と比較して非常に甘味が強く、少量の使用で満足感が得られるため、摂取カロリーを抑えることができる。また、代謝にインスリンを必要としないため、摂取しても血糖値とインスリン分泌への影響がなく、体内で代謝されずそのまま排泄(はいせつ)されるものもある。このため、合成甘味料は、砂糖代替甘味料として糖尿病患者や肥満の人に利用されているが、近年の健康・ダイエット志向により増加している低カロリーやカロリーゼロの食品にも多く使用されている。

 代表的な合成甘味料として、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどがある。アスパルテームを除いて、これらのエネルギーは1グラム当り0キロカロリーである。

 サッカリンは、トルエンを原料として合成され、甘味の強さは砂糖の200~700倍である。水に溶けにくいため、水溶性のナトリウム塩やカルシウム塩として食品に利用される。アスパルテームは、アミノ酸のL-アスパラギン酸とL-フェニルアラニンを結合させたジペプチドをメチルエステルにしたもので、甘味の強さは砂糖の約200倍である。体内ではもとのアミノ酸に分解され、タンパク質と同様に吸収されるため、エネルギーは1グラム当り4キロカロリーである。加工食品に添加する際は、フェニルアラニンを分解できないフェニルケトン尿症の患者のためにフェニルアラニンを含有する旨の表示が義務づけられている。アセスルファムカリウムは酢酸を原料に合成され、甘味の強さは砂糖の約200倍、スクラロースは砂糖を原料に合成され、甘味の強さは砂糖の約600倍を示す。これらの甘味料はそれぞれの味質や特性を生かし、砂糖に近い自然な甘味に近づけるために複数を組み合わせて使用される例も多い。

 完全な化学合成品ではないが、天然の糖を原料とする糖アルコールも食品添加物として広く用いられている。ソルビトールやキシリトールは、生体内では分解・吸収されにくい難消化性糖質で、エネルギーは砂糖と比較して25%低い(1グラム当り約3キロカロリー)。低カロリー甘味料、むし歯になりにくい甘味料、血糖値の上昇を抑制する特定保健用食品や機能性表示食品などに利用されている。

[藤原しのぶ 2024年8月16日]

人工甘味料の安全性

2023年に世界保健機関(WHO)は、人工甘味料(ノンシュガー甘味料)の使用に関するガイドラインを新たに発表したが、人工甘味料の長期的な摂取による健康への影響は、まだ明確になっていないことも多い。

 これまでに開発された人工甘味料のなかには、一度は食品添加物として指定されたが、のちにその安全性に疑いが生じたため指定から削除され、食品への添加が禁止されたものもある。ズルチンは、第二次世界大戦後の日本で広く流通したが、1966年(昭和41)に食中毒事件が起こり、肝機能障害や発がん性などの毒性が認められたため、1968年に指定から削除された。サイクラミン酸ナトリウム(通称、チクロ)は、1964年に日本でマウス胎児の発育阻害、1968年にアメリカで催奇形性の危険性が発表され、日本では1969年に指定から削除された。

 また、サッカリンは日本でもっとも古くから使われている人工甘味料であり、1961年に食品添加物として指定された。一時、発がん性が疑われ、日本でも使用が禁止されたことがあるが、通常の使用量では吸収されても分解されず尿中へ排泄されることから、サッカリン自体に発がん性はないとされ、使用禁止は解除された。サッカリンおよびナトリウム塩・カルシウム塩は、対象食品ごとに最大使用量の使用基準がある。

[藤原しのぶ 2024年8月16日]

アスパルテーム摂取による健康への影響

2023年、WHO傘下にある国際がん研究機関(IARC)が、アスパルテームを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」要因に分類したことを公表し、注目を集めた。これは、発がんの原因となるかどうかについての科学的根拠の強さを示すもので、アスパルテームの発がん性の強さやその摂取に基づく発がんリスクの大きさを示すものではない。

 これと同時に、国連食糧農業機関(FAO)とWHOの合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、実際にアスパルテームを摂取した際の健康への影響を評価し、アスパルテームの許容一日摂取量(対象の化合物を一生涯にわたり毎日摂取しても健康への悪影響がないと考えられる1日当りの摂取量)は、これまで設定されていた値(1日当り体重1キログラム当り0~40ミリグラム)が適切であるという結果を公表した。その理由として、アスパルテームの摂取がヒトに有害な影響を与えるという説得力のある根拠はなかったこと、アスパルテームは摂取後に消化管内で完全に加水分解され、一般的な食品の摂取後にも生じる代謝物(フェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノール)となるため、アスパルテームがそのまま全身循環に入ることはないこと、を指摘している。また、世界各国におけるアスパルテームの摂取量を推定し、摂取量は許容一日摂取量より低かったことから、現状ではアスパルテーム摂取により健康への悪影響が生じる心配はないと結論づけている。

 日本では、内閣府食品安全委員会が「アスパルテームに関するQ&A」をウェブサイトに公開し、情報を提供している。そのなかで、日本人のアスパルテーム摂取量は許容一日摂取量よりも大幅に低い、1日当り6.58ミリグラムと推定されている。

[藤原しのぶ 2024年8月16日]

『吉積智司他著『甘味の系譜とその科学』(1986・光琳)』『シーエムシー編・刊『機能性甘味料の全容』(1988)』『東京都消費者センター試験研究室編『試買テスト・シリーズ3-11 食品中の甘味料及び品質保持剤等』(1993・東京都消費者センター)』『伊藤汎・小林幹彦・早川幸男編著『光琳選書7 食品と甘味料』(2008・光琳)』『〔WEB〕内閣府食品安全委員会「アスパルテームに関するQ&A」(2023) https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/aspartame.html(2024年8月閲覧)』『〔WEB〕World Health OrganizationUse of non-sugar sweeteners: WHO guideline(2023) https://www.who.int/publications/i/item/9789240073616(2024年8月閲覧)』『〔WEB〕消費者庁「第10版食品添加物公定書」(2024) https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/food_additives/official_documents_002(2024年8月閲覧)』


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知恵蔵mini 「人工甘味料」の解説

人工甘味料

人工的に作られた、天然に存在しない甘味料のこと。1900年代初頭に初めて開発され、代表的なものにアスパルテーム、スクラロース、サッカリン、アセスルファムカリウムがある。これらはショ糖の数百倍の甘さがあり、生理的熱量(カロリー)がゼロか極めて低い。清涼飲料水や菓子類、歯磨きなどに添加物として利用されているほか、肥満や糖尿病などの原因にならないとして砂糖に代わる甘味料商品も発売されている。幾多の検証により人工甘味料の有害性は否定されてきたが、2014年9月、イスラエルの研究チームが、主要人工甘味料3種が腸内細菌に影響を与えて血糖値レベルを引き上げ、肥満や糖尿病のリスクを高める可能性があることなどを、イギリスの科学誌ネイチャー電子版に発表した。

(2014-9-24)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人工甘味料」の意味・わかりやすい解説

人工甘味料
じんこうかんみりょう

合成甘味料ともいう。化学的に合成した,甘味をもつ化合物。ズルチン,サイクラミン酸塩 (チクロ) ,サッカリンなど,砂糖代用の安価な甘味料として,ジュース,缶詰,菓子などに広く使用されてきたが,その毒性が問題となり,日本では 1968年7月,ズルチンの使用が全面禁止となり,チクロも翌年 11月使用禁止となった。サッカリン,サッカリンナトリウム,グリチルリチン酸二ナトリウムも使用が制限されている。それ以外に使用を許可されているのはD-キシロース,D-ソルビット,アスパルテームの3種だけである。

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改訂新版 世界大百科事典 「人工甘味料」の意味・わかりやすい解説

人工甘味料 (じんこうかんみりょう)

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百科事典マイペディア 「人工甘味料」の意味・わかりやすい解説

人工甘味料【じんこうかんみりょう】

合成甘味料

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栄養・生化学辞典 「人工甘味料」の解説

人工甘味料

 人工的に合成した甘味料.サッカリン,アスパルテームなど.

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世界大百科事典(旧版)内の人工甘味料の言及

【合成甘味料】より

…化学的に合成された甘味をもつ化合物のことで,人工甘味料ともいう。化学構造と甘味との関係は古くから研究されているが,アルデヒド基-CHO,オキシム基-CH=NOH,ハロゲン基,アミノ基-NH2,スルホ基-SO3H,トリアジン核,スルホアミノ基-SO2NH2,水酸基-OHをもった化合物がおおむね甘味が強い。…

※「人工甘味料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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