モンテカルロ法(読み)もんてかるろほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンテカルロ法」の意味・わかりやすい解説

モンテカルロ法
もんてかるろほう

1940年代のなかばごろ、ノイマンとウラムによって提案された数学的方法で、簡単にいえば問題乱数を用いて解く方法である。

 古典的なビュフォンの針の問題は、考え方としてはモンテカルロ法一例といえる。床の上に2a間隔平行線を何本も引いておき、上から長さ2lla)の針を落とすと、針が平行線と交わる確率pp=2laπとなる。そこで針を落とす実験をN回行って落ちた針が平行線と交わった回数がnであれば、n/Np近似値とみることができる。こうしてπ≒2lN/anからπの近似値を実験によって求めることができる。これがビュフォンの針の問題である。

 モンテカルロ法の応用は次の二つに大別される。一つは確率的問題への応用であり、もう一つは決定論的問題への応用である。確率的問題ではそれを直接表現する確率モデルを考える。たとえば、在庫管理の問題では需要が確率的に変化し、待ち行列の問題では客の到着状態やサービス時間が確率的に変動する。これらのモデルにおいて確率的な部分を乱数を用いて表現して問題の解を実験的に求めることができる。決定論的問題では、まず、その問題に対応する適当な確率モデルを設定する。ビュフォンの針の問題はこの型である。また、逆行列を数値的に求めること、定積分の値を数値的に求めること、偏微分方程式境界値問題数値解を求めることなど、多くの決定論的問題に対しても確率モデルを考え、確率的問題の場合と同様に乱数を用いて問題を解決することができる。しかし直接に(確率モデルを経由しないで)数値計算が可能な場合には、そのほうがモンテカルロ法より効果的のようである。最近では、乱数を用いて計算機によるシミュレーションで解く方法をモンテカルロ法とよんでいる。

古屋 茂]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンテカルロ法」の意味・わかりやすい解説

モンテカルロ法
モンテカルロほう
Monte Carlo method

決定論的および確率論的事象の処理について,乱数を用いる無作為抽出により,数値化,模型化して問題の近似解を導く方法。地中海に面したモナコのモンテカルロにおける賭博にまねて1種のルーレットによる乱数を使用するために名づけられた。簡単な処理や事務には乱数表がよく利用される。現在は複雑な事象に関して,電子計算機により多数の乱数を発生させ,サンプリングを能率化する。宇宙線のカスケードシャワーの問題,原子炉内における中性子の経路問題,社会における待合せ問題,ランダムウォーク問題,企業における在庫量管理の問題などの確率的事象として処理すべき多様な事項に応用される。

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