袋の中に0,1,2,3,……,9の10個の数字が書いてある等質,等大の球が入っているとしよう。この袋の中から“がらがらまぜ”て一つの球を取り出し,その球に書いてある数字を記録する。次に,その球を袋に戻して,また,“がらがらまぜ”同じように一つの球を取り出し,その球に書いてある数字を記録する。このような操作を繰り返していくと,得られた数列には,0から9までの数字が等確率かつ無規則に現れる。こうした数列を0から9までの1桁の数からなる一様乱数,または単に乱数と呼ぶ。2桁,3桁からなる乱数も同様に定義される。袋の中の球を用いるかわりに正六面体,正八面体,正十二面体,正二十面体などのさいころを用いても乱数をつくることができる。これらのさいころを乱数さいと呼ぶ。周囲が0から1までの連続的な目盛をもつルーレットをまわして,区間(0,1)上の一様乱数をつくる方法も古くからよく用いられた。しかし,これらの方法で多数の乱数をつくろうとするとたいへんな手間がかかる。そこで,“袋の中の球を取り出す”“さいころを振る”“ルーレットをまわす”という操作にかわるものとして,コンピューターで乱数を発生させることが考えられてきた。
その一つは,簡単な算術式,
xn+1=axn+c(mod m),xo=b
を用いるものである。この式の意味は,q,b,c,mを前もって決めておいて,まず,ax0+c=ab+cをmで割った余りをx1とし,さらにax1+cをmで割った余りをx2とする。順次にこの方法で0からm-1までの整数からなる乱数ができる。この方法で得られる乱数を算術乱数arithmetic random number,または,擬似乱数pseudo random numberといっている。この方法のことを混合型合同法といい,c=0の場合を単に合同法と呼ぶ。
他の一つは物理乱数physical random numberと呼ばれるもので,袋の中の球やさいころにかわるような物理現象を利用して発生するものである。発生方法としては放射線を利用するものがよく用いられる。この場合,放射源(たとえばセシウム137137Cs)から放射されるγ線の一定時間内における個数がパアソン分布に従うことを利用する。また,ダイオードによってひき起こされるノイズを利用するものもある。物理乱数は,乱数列の無規則性という観点からは算術乱数に比べてすぐれているといえるが,算術乱数のようにその発生が手軽にできない。また,再現性がないなどの欠点をもつ。
一様乱数を変換して,各種確率分布に従う乱数,すなわちパアゾン乱数,二項乱数,指数乱数,球面上の一様乱数などをつくることができる。これらの乱数は,確率モデルを仮定したシミュレーション,在庫管理,境界値問題,積分計算などに応用される。また,標本調査法で無作為標本を抽出する場合とか,暗号などを作成する場合にも用いられる。
執筆者:脇本 和昌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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