モンパノキ(その他表記)Messerschmidia argentea (L.f.)Johnston

改訂新版 世界大百科事典 「モンパノキ」の意味・わかりやすい解説

モンパノキ
Messerschmidia argentea (L.f.)Johnston

琉球諸島の海岸に普通に生えるムラサキ科スナビキソウ属の小低木。北限は種子島であるが,アジア,アフリカ,オーストラリア,太平洋諸島熱帯・亜熱帯域の海岸に広く分布する。樹高は1~3m,枝は太いが材が軟らかく折れやすい。若枝,葉,花序には銀灰色の毛がビロード状に密生する。葉は倒卵状披針形で長さ10~15cm,厚くやや肉質。花は南西諸島では8月ころ咲き,カタツムリ状の小花序が集まった散房状花序に密につく。花冠は白色で,5裂して平開し,径約4mm。萼筒外面には密毛がある。果実は核果で球形,径約4mm。材は軟らかく軽いので,釣りのうきなどに利用される。葉をすりつぶしたしぼり汁は魚などの毒消しに有効といわれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンパノキ」の意味・わかりやすい解説

モンパノキ
もんぱのき / 紋羽木
[学] Heliotropium foertherianum Diane et Hilger
Argusia argentea (L.f.) H.Hein

ムラサキ科(APG分類:ムラサキ科)の常緑亜高木。葉は倒卵状披針(ひしん)形または長楕円(ちょうだえん)形で長さ9~14センチメートル、多肉質でビロード状の細毛を密生し、銀白色を帯びる。名は、葉を毛の立った柔らかい綿布の一種である紋羽(もんぱ)に見立てたもの。花は白色で径約4ミリメートル。果実はほぼ球形で径約5ミリメートル。海岸に生え、鹿児島県宝島(たからじま)以南から沖縄、小笠原(おがさわら)諸島および台湾から熱帯地方に分布する。海岸の防風・防潮林、庭園樹によい。材は軽軟で容易に工作ができ、浮子(うき)などにする。沖縄では漁師水中眼鏡の縁によく用いられる。

[島袋敬一 2021年7月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンパノキ」の意味・わかりやすい解説

モンパノキ(紋葉の木)
モンパノキ
Messerschmidia argentea

ムラサキ科の常緑高木。旧大陸熱帯や太平洋諸島の海岸に生じ,日本では奄美群島以南の琉球列島小笠原諸島砂浜にみられる。高さ数mでよく分枝し,幹も曲りくねることが多い。樹皮は灰黒色で,深い裂け目が目立つ。葉は枝の上半部に密に互生し,下半部は前年までの落葉痕が顕著に残る。「紋葉」の名はこの落葉痕に基づくという。葉身は長さ 20cmほどの楕円形で質が厚く,全体に銀白色の毛がビロード状に密生する。夏,円錐花序に径4~5mmのカップ状の白花を多数つける。花後に球形の果実を生じ,橙赤色から黒色に熟す。

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