太い(読み)フトイ

デジタル大辞泉 「太い」の意味・読み・例文・類語

ふと・い【太い】

[形][文]ふと・し[ク]
棒状のものの径が大きい。周囲が大きい。また、肢体などに肉や脂肪がついている。「―・いパイプ」「首が―・い」⇔細い
線状のものの幅が大きい。「―・い線」⇔細い
声量が豊かである。また、低く重々しい声である。「―・い声」⇔細い
大胆である。また、落ち着いている。「神経が―・い」⇔細い
横着である。ずうずうしい。「食い逃げとは―・い奴だ」「―・い了見」
物事規模が大きい。勢いが盛んである。⇔細い
「苦心して―・くした身代を」〈木下尚江良人の自白
[補説]動詞「ふとしく」の誤用から生じたシク活用の例が近世以降認められる。
埋もれ木のふとしきを掘り得れば」〈読・莠句冊
[派生]ふとさ[名]
[類語](1太やか太め寸胴ずんどう肉太幅広はばびろ極太ごくぶと骨太/(4野放図勝手わがまま横着身勝手得手勝手手前勝手自己本位好き放題好き勝手気随気ままほしいまま恣意的しいてき利己的エゴイスチック好き自分勝手気任せ奔放自由尊大横柄傲然高慢傲慢驕慢倨傲大風おおふう高姿勢高飛車高圧的居丈高権柄尽く・偉そう・口幅ったい僭越越権不遜態度が大きい我が物顔空威張り野太い図太い豪胆厚かましい図図しいふてぶてしいおこがましいえげつないいけ図図しい猛猛しい虫がいい厚顔厚顔無恥鉄面皮破廉恥面の皮が厚い心臓が強い心臓に毛が生えている恥知らず傍若無人人を人とも思わない眼中人無し聞く耳を持たない横紙破りふんぞり返る自己中人も無げ

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精選版 日本国語大辞典 「太い」の意味・読み・例文・類語

ふと・い【太】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]ふと・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. [ 一 ] 物体の周囲やさしわたしが長く、体積・面積が大きい。
    1. 棒状のものの径が大きい。また、線状のものの幅が大きい。
      1. [初出の実例]「過ぎて太(いと)長く〈略〉太(いと)(フトカラ)ざらむ」(出典:蘇悉地羯羅経延喜九年点(909))
    2. 体の肉づきがよい。肥えている。
      1. [初出の実例]「おとなだちたる人は、ふときよし」(出典:能因本枕(10C終)六〇)
    3. 声や息の容量が大きい。低音音量が豊かである。
      1. [初出の実例]「白く━太(フト)き息を吐く濁声(だみこえ)」(出典:二人比丘尼色懺悔(1889)〈尾崎紅葉〉自害)
    4. 金や品物などたくわえが多い。財宝豊かである。
      1. [初出の実例]「太(フト)ふ成り・煙の細ひ銀子かしや」(出典:雑俳・智慧くらべ(1868))
    5. 非常に大きい。はなはだしい。甚大だ。
      1. [初出の実例]「ただふとく物を思ふと見えたり」(出典:御伽草子・猿源氏草紙(室町末))
    6. 射芸で、張った弓のつると弓との間隔が広いことをいう。
    7. 物の目などがあらい。目がつんでいない。
      1. [初出の実例]「細いと云をこまかい、太ひを荒ひ」(出典:随筆・皇都午睡(1850)三)
  3. [ 二 ] 心や気持が豊かで大きい。
    1. 大胆で、物事に恐れず、動揺しない。落ち着きがあって安定している。
      1. [初出の実例]「真木柱太(ふとき)心はありしかどこの吾が心しづめかねつも」(出典:万葉集(8C後)二・一九〇)
    2. 横着である。ずうずうしい。ずぶとくふてぶてしい。ふらちだ。
      1. [初出の実例]「竹の子をぬすむもふとき心哉〈光有〉」(出典:俳諧・毛吹草(1638)五)
    3. 歌論で、歌が堂々として雄大である。男性的でたくましい美を示し、「たけたかし」に近い。高体・高歌・長高様というのにもほぼ等しい。
      1. [初出の実例]「春・夏はふとく大きに、秋・冬は細くからび、恋・旅は艷に優(やさ)しくつかうまつれ」(出典:無名抄(1211頃))

太いの補助注記

上代には、語幹「ふと」が「ふとしく」「ふとのりと」など、神やそれに準ずるものに関する名詞や動詞に上接するところから、賛美の意が込められていたと考えられる。しかし、中古になると、例えば「能因本枕」では、「黒き髪の筋ふとき」を「いやしげなる物」とするごとく、醜い物として描写する例も出てくる。

太いの派生語

ふと‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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