日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーヌの大将」の意味・わかりやすい解説
モーヌの大将
もーぬのたいしょう
Le Grand Meaulnes
アラン・フルニエの長編小説。1913年『NRF(エヌエルエフ)』(新フランス評論)誌7月~10月号に連載、同年10月ただちに単行本となる。私(わたくし)(フランソア・スーレル)の学ぶ上級学校に転校してきたモーヌは、大柄で力が強く、モーヌの大将(グラン・モーヌ)とよばれる。その彼がある日突然失踪(しっそう)し、数日後別人のように無口になって帰ってくる。道に迷った先の館(やかた)でイボンヌなる麗人に出会い、激しい恋に落ちたのだ。しかし馬車で送られたために館への道がわからない。こうしてモーヌと私の見失われた道を尋ねての冒険が始まる。情熱と憧憬(しょうけい)、友情と愛、純粋さゆえの悲劇を香り高い文体でつづったこの作品は、短命に終わった作者自身の青春の記念碑であるとともに、青春文学の一傑作と目されている。
[真崎隆治]
『水谷謙三訳『モーヌの大将』(角川文庫)』