モーパン嬢(読み)モーパンジョウ(その他表記)Mademoiselle de Maupin

デジタル大辞泉 「モーパン嬢」の意味・読み・例文・類語

モーパンじょう〔‐ヂヤウ〕【モーパン嬢】

原題、〈フランスMademoiselle de Maupinゴーチエ長編小説。1835年刊。序文の「芸術のための芸術」論が有名

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関連語 新潮文庫

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーパン嬢」の意味・わかりやすい解説

モーパン嬢
もーぱんじょう
Mademoiselle de Maupin

フランスの作家ゴーチエの長編小説。1835年刊。芸術美崇拝と理想の愛の夢をつづる書簡体小説。遍歴の騎士に扮(ふん)して男性探求の旅に出た美少女マドレーヌ・ド・モーパンの「二重の愛」(副題)の物語。魅力的な愛人ロゼットとむつまじく暮らす詩人ダルベールは、たぐいまれな美貌(びぼう)のモーパン嬢に、少年のころから憧憬(しょうけい)の的であった崇高な恋人をみいだす。一方、ロゼットも美しい騎士にひそかに恋心を抱く。こうした二重の三角関係のなかで、両性具有(アンドロギヌス)たるモーパン嬢は一夜、双方の愛に身を任せたあとに姿を消す。

 なお、文学史上に有名な本書の「序文」は、芸術の目的は「美」以外には存在しないと主張し、文芸を人類の教化、福祉に資すべきとする当時の批評界を激しく攻撃している。

[井村實名子]

『田辺貞之助訳『モーパン嬢』全二冊(新潮文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モーパン嬢」の意味・わかりやすい解説

モーパン嬢
モーパンじょう
Mademoiselle de Maupin

フランスの詩人,小説家テオフィル・ゴーチエの小説。 1835~36年刊。貴族の娘モーパンが,婚前に男性の何たるかを知ろうとして男装して旅に出,ついに正体を見破った詩人のダルベールに身をまかせるまでの冒険を描く。「芸術のための芸術」を提唱した序文は有名。

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世界大百科事典(旧版)内のモーパン嬢の言及

【ゴーティエ】より

…初期の詩作《アルベルチュス》(1832)で過激なロマン派詩人の熱狂を示したが,小説《青年フランス派》(1833)でそうしたロマン派の青年像を戯画的に描くうちに,やがて熱狂もさめていった。さらに小説《モーパン嬢》(1835)の序文では,〈芸術至上主義〉を唱えて芸術の自律性を主張,文学の社会的効用を説くユゴーと決別した。詩人としての想像力・感受性・思想に欠けてはいたが,絵画的な形式美を表現する才能に恵まれていた。…

※「モーパン嬢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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