日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤハズヤシ」の意味・わかりやすい解説
ヤハズヤシ
やはずやし
seaforthia palm
[学] Ptychosperma
ヤシ科(APG分類:ヤシ科)アレカヤシ亜科ヤハズヤシ属の総称。ニューギニア、ソロモン、フィジー、オーストラリア、ミクロネシア、ニュー・ヘブリデス原産で、約40種あり、中・小形のヤシ。幹は単一のものと株立ちのものがあり、幹肌には環紋(葉痕(ようこん))がある。葉は全裂羽状葉で、小葉の先端が切頭(せっとう)形(歯形)になり、とくに先端の小葉は顕著である。小葉端が歯状をなすヤシは原則として種子に折り畳んだ5本の溝がある。雌雄同株で単性花をつけ、花柄は2~4回分枝する。雄花の雄しべは20~130本で不定である。雄花には不稔(ふねん)の雌しべがあり、雌花には無精の雄しべがある。果実は赤紅色で、ほぼ楕円(だえん)形、胚(はい)は底部にある。光線の足りない室内でもよく生育し、室内装飾用に適する。
よく知られるものに、ダイオウヤハズヤシprincess palm/P. elegans Bl.、ホシノヤシhoshino palm/P. hosinoi H.E.Moore,Jr.、シュロチクヤシcluster palm/P. macarthurii Wendl.がある。
ダイオウヤハズヤシはオーストラリアのクイーンズランド原産。幹は単一で高さ6メートル、径10センチメートル、基部は肥大する。葉は光沢のある緑色で、長さ3.5メートル、小葉羽片は頂生片の長さ25センチメートル、幅2.5センチメートル、中央片の長さ50~70センチメートル、幅3~4センチメートル、先端が切頭形(歯形)になる。肉穂花序は多数の小花柄が乱れ、長さ約50センチメートル。雄花は白色で芳香があり、長さ7ミリメートル、雌花は黄色で長さ7ミリメートル。果実は赤色で楕円形、種子は楕円形で、5本の溝がある。胚乳は錯道質で、胚は底部にある。全体がユスラヤシに似るが、小葉の形状が異なり、種子がまったく違うので区別できる。栽培は容易で、鉢植えや庭園樹に好適で、室内でもよく育つ。
ホシノヤシはポナペ原産。全体が小形で、径15センチメートル、幹肌に小黒点と節の環紋(葉痕)がある。葉は羽状葉で長さ3メートル、緑色で光沢がある。小葉羽片は7~9センチメートル間隔につき、頂生片は長さ18センチメートル、幅3センチメートル、中央片は長さ80センチメートル、幅16センチメートル、不規則な切頭形(歯形)でとくに頂生葉の幅が広い。肉穂花序は長さ60センチメートル、雌花の両側に各1個の雄花があり3個1組の集合花が散生する。雄花は長さ7ミリメートル、雌花は開花期間は長さ3.5ミリメートル、花期後は7ミリメートル。果実は赤色で長さ3センチメートル、径2センチメートル。種子は黄白色で、5本の縦溝があり、山形に曲がった側に2本の牙(きば)形のひだがある。錯道質はなく、胚は底部にある。学名はPonapea hosinoi Kaneh.ともされる。
シュロチクヤシはニューギニア原産。幹は株立ちで高さ7~8メートル、径8センチメートル。幹肌に環紋(葉痕)がある。葉は長さ1.2~2メートル、幅0.6~1.1メートル、表面は光沢のある緑色、裏面は淡緑色。小葉羽片は頂生の1対がとくに広く、他片は長さ30~60センチメートル、幅4~8センチメートルで22~40枚が対生または互生し、個体差が多様である。肉穂花序は青白黄色で長さ60~70センチメートル、雄花は黄緑色で長さ5ミリメートル、雌花は黄緑色で長さ3.5ミリメートル。果実は赤色で楕円形、長さ1.2センチメートル、錯道質はない。鉢植え、露地植えともに可能で、室内用にも好適である。栽培温度は6℃以上。
[佐竹利彦 2019年5月21日]