ユン・ソンニョル(読み)ユン・ソンニョル(その他表記)Yoon Suk-yeol

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユン・ソンニョル」の意味・わかりやすい解説

ユン・ソンニョル(尹錫悦)
ユン・ソンニョル
Yoon Suk-yeol

[生]1960.12.18. ソウル
大韓民国(韓国)の法律家,政治家。検事総長在任 2019~21),大統領(在任 2022~24)。ムン・ジェイン(文在寅)大統領の任期満了をうけて行なわれた 2022年3月9日の大統領選挙で勝利し,政治家に転身した。議会運営に行きづまり,2024年12月3日に反国家勢力から国を守ることを理由に「非常戒厳」を宣布したものの数時間で解除され,同 14日には議会で大統領弾劾決議案が可決,職務停止に追い込まれた。
1979年にソウル大学法学部に入学,卒業後,同大学院に進学し 1988年修了。司法試験に 8回連続不合格ののち,1991年に合格。1994年司法研究員となり,同年にテグ大邱)地方検察庁検事に赴任チュンチョン春川),スウォン(水原),プサン釜山)などの地方検察庁を転々とし,2002年に弁護士となったが,2003年に検察に戻り,2009年に大邱地方検察庁の特捜部部長となる。同年,大検察庁(最高検察庁)の犯罪情報担当官に起用され,同庁中央捜査部の幹部を務めたのち,2012年にソウル中央地方検察庁特捜部部長。2014年大邱高等検察庁検事,2016年テジョン(大田)高等検察庁検事を経て,2017年ソウル中央地方検察庁検事長に昇進し,2019年には大検察庁検事総長に就任した。
2016年のパク・クネ(朴槿恵)大統領の友人による国政介入事件の捜査や 2018年のイ・ミョンバク(李明博)元大統領の収賄罪による逮捕・起訴などで実績を上げ,文在寅政権により検察トップに抜擢されたものの,政権が推し進める検察の捜査権限縮小の動きに激しく抵抗し,検事総長就任後には文大統領の側近の不正調査に着手,チョ・グク(曺国)法務大臣を就任 1ヵ月あまりで辞任に追い込むなどして対立を深めた。2020年12月にはチュ・ミエ(秋美愛)法相の申請を受理した法務省の懲戒委員会から 2ヵ月間の停職処分を言い渡されたのを機に政権側と泥仕合を演じ,秋法相は直後に,自身は翌 2021年3月に検事総長を辞任した。2022年3月の大統領選挙で保守系野党「国民の力」の公認候補として出馬与党「共に民主党」候補のイ・ジェミョン(李在明)前京畿道知事を僅差で破り,5年ぶりに保守党政権を復活させた。同 5月10日就任。硬直状態にある朝鮮半島情勢の打開や,元徴用工や慰安婦問題がからみ前政権において第2次世界大戦後最悪といわれた日本との関係修復などが期待された。
しかし,尹政権への中間評価の意味合いが強い 2024年4月の議会選挙で与党「国民の力」が大敗,野党「共に民主党」が過半数を占める与野党ねじれの政権運営を強いられ,重要法案が可決しない状態が続いた。2024年12月3日に突如,非常戒厳を発令して事態打開をはかったが,議会が戒厳解除要求を可決,約 6時間で幕が引かれた。韓国で 45年ぶりとなる戒厳令は国民の激しい怒りを買い,議会は政治危機を招いたとして 12月14日に大統領弾劾決を可決した。尹は職務停止となり,翌 2025年1月には内乱を首謀した罪で逮捕,起訴され,4月4日に憲法裁判所により罷免・失職となった。

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