改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ化銅」の意味・わかりやすい解説
ヨウ(沃)化銅 (ようかどう)
copper iodide
化学式CuI。酸化数Ⅰの化合物のみ知られている。無色固体,比重5.63,融点605℃,沸点1290℃。2価銅イオン水溶液にヨウ化アルカリを加えるとヨウ化銅(Ⅰ)が沈殿する。このとき酸化還元反応が起こりヨウ素も生成する。
2Cu2⁺+4I⁻─→2CuI+I2
したがって銅(Ⅱ)のヨウ化物を得ることはできない。結晶構造はセン亜鉛鉱型をとる。水に対する溶解度は0.42g/100ml(25℃)で,ほとんど水に溶けない。ヨウ化アルカリ水溶液中では[CuI2]⁻,[CuI3]2⁻を生ずるため溶解度は著しく増大する。またアンモニア水,チオ硫酸塩溶液に溶ける。アミン,シアン化アルキル等の有機溶媒に溶けるのは,これら溶媒の銅に対する配位能にも関連している。有機反応の触媒としてよく使われる。また,氷結晶核生成助長剤として空中散布される(人工降雨)。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報