銅の硫酸塩で,銅の酸化数ⅠとⅡの化合物がある。
化学式Cu2SO4。酸化銅(Ⅰ)と硫酸ジメチルとの反応で合成される。無色の結晶性固体。水と作用すると直ちに加水分解して,銅,硫酸銅(Ⅱ),酸化銅(Ⅱ)を生ずる。したがって水溶液中でこれを合成することはできない。
化学式CuSO4。無水硫酸銅ともいう。白色固体,比重3.64。5水和物CuSO4・5H2Oを190℃に加熱すると得られる。4個のO原子がCu原子に平面4配位し(Cu-O原子間距離1.9~2.0Å),これと垂直方向に2個のO原子が配位している(Cu-O原子間距離2.4Å)。斜方晶系。650℃に加熱するとSO3を発生しCuOとなる。メチルアルコール100gに1.04g溶ける。エチルアルコールに不溶。水を吸収して青色を呈するので有機液体中の水分の検出あるいは脱水に用いられる。
化学式CuSO4・3H2O。3個のH2O分子のOと1個のSO4のOが平面に4配位し(Cu-O原子間距離1.96Å),これと垂直方向にSO4のO原子が2個異なる距離に配位している(Cu-O原子間距離2.39Åおよび2.45Å)。この配位多面体は水素結合によりつながっている。
化学式CuSO4・5H2O。硫酸銅(Ⅱ)水溶液から結晶させるとき生ずる。青色結晶,三斜晶系。格子定数a=6.105Å,b=10.72Å,c=5.949Å,α=97°34′,β=107°17′,γ=77°26′。立体構造を図1に示す。Cuには4分子のH2Oが平面上に,それと垂直方向に2個のSO4がそれぞれOによって配位している。さらに5番目のH2Oは,Cuに配位したH2OのOHおよびSO4のOと4本の水素結合をつくっている。加熱したときに最後に残るのはこのH2Oであり,SO4との結合の強さを示すものとみなされる。またこの構造は図2に示すようにも表される。すなわちCuとSO4が鎖状につながり,その鎖を結晶水が水素結合で連結しているとみることができる。比重2.286,水100gに対する溶解度14.3g(0℃),22.8g(25℃),75.4g(100℃)。メチルアルコール100gに対する溶解度15.6g(18℃)。エチルアルコールに不溶。グリセリンに可溶。殺菌剤,ガラスの着色剤,材木の防腐に用いられ,石灰乳との混合物はボルドー液といい,ブドウのべと病予防に用いられる。これはCu2⁺のべと菌に対する強い殺菌力によるもので,このほかジャガイモ,トマト,バナナ等多くの作物に対し使用されている。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
銅の硫酸塩で、一価および二価銅の化合物が知られている。
(1)硫酸銅(Ⅰ) 無色あるいは灰色の粉末。化学式Cu2SO4、式量223.15。銅を200℃に加熱した濃硫酸に溶かし、これをメタノール(メチルアルコール)中に滴下して沈殿させる。あるいはエーテル中で酸化銅(Ⅰ)と硫酸ジメチルの当量を反応させる。乾燥空気中では安定であるが、湿った空気中では徐々に、水を加えればただちに分解する。
(2)硫酸銅(Ⅱ) 無水和物CuSO4と五水和物がある。無水和物はハイドロカイアナイトとして、五水和物は胆礬(たんぱん)として天然にも産する。無水和物は無色の粉末。式量159.6。メタノールにはわずかに溶けるが、エタノール(エチルアルコール)には溶けない。水を吸収して五水和物になりやすいため、有機化合物の乾燥剤ないしは脱水剤として用いられる。
五水和物は、銅に希硫酸と空気を作用させるか、酸化銅(Ⅱ)CuOを希硫酸に溶かし、濃縮して結晶化させる。工業的には黄銅鉱に空気を通じて熱し、生じた硫酸銅(Ⅱ)を水で抽出するか、銅精錬の電解廃液を利用するなどして得られている。青色の結晶。乾燥空気中では徐々に風解する。熱すると45℃で三水和物CuSO4・3H2Oに、110℃で一水和物CuSO4・H2Oに、250℃で無水和物となる。水によく溶け、グリセリン、メタノールなどにも溶ける。水酸化ナトリウム水溶液を加えて熱すると黒色の酸化銅(Ⅱ)を沈殿する。アンモニア水では初め塩基性硫酸銅の青緑色沈殿を生じるが、過剰のアンモニアで、濃青色のアンミン錯塩を生ずる。
CuSO4・Cu(OH)2+8NH3
―→[Cu(NH3)4]SO4+[Cu(NH3)4](OH)2
電解液となるほか、他の銅塩の原料、顔料、ボルドー液の原料、媒染剤、分析試薬など各種の用途がある。
[中原勝儼]
硫酸銅(Ⅱ)五水和物 | |
CuSO4・5H2O | |
式量 | 249.7 |
融点 | ― |
沸点 | ― |
比重 | 2.286(測定温度18℃) |
結晶系 | 三斜 |
溶解度 | 24.3g/100g(水0℃) 205g/100g(水100℃) |
CuSO4(159.61).工業上もっとも重要な銅塩である.天然にはカルカンサイトとして産出する.銅を熱濃硫酸に溶かすか,酸化銅を硫酸に溶かした水溶液を蒸発濃縮させると五水和物が得られる.五水和物をタンパン(胆ぱん)という.青色の結晶.密度2.29 g cm-3.水100 g に対する溶解度は19.2 g(0 ℃),26.3 g(20 ℃).5分子の水のうち,4分子は銅原子に配位し,1分子の水は硫酸イオンと水素結合をしている.102 ℃ で2分子の水を失って三水和物,さらに113 ℃ で2分子の水を失い一水和物となり,250 ℃ で無水物となる.無水物は白色の粉末.密度3.61 g cm-3.吸湿性で,水に易溶.650 ℃ で酸化銅(Ⅱ)とSO3に分解する.エタノールなど有機物中の水の検出および脱水剤,銅塩製造の原料,銅精練の電解液,農薬(ボルドー液),めっき,飼料添加物,媒染剤,顔料,防腐剤などに用いられる.有毒.[CAS 7758-98-7:CuSO4][CAS 7758-99-8:CuSO4・5H2O]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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