ラウールの法則(読み)らうーるのほうそく(英語表記)Raoult's law

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラウールの法則」の意味・わかりやすい解説

ラウールの法則
らうーるのほうそく
Raoult's law

フランスのラウールが19世紀の終わりごろ実験的にみいだした法則。これは、のちにスウェーデンアレニウスオランダのファント・ホッフにより理論的にも理想溶液について証明された。希薄溶液では、溶媒n1モルに溶質n2モルを溶解したとき、その溶媒の蒸気圧p1と溶液の蒸気圧p2との間には、

の関係がある、すなわち溶液の蒸気圧降下は溶液の溶質の濃度に比例するという法則。溶媒あるいは溶質のモル数nは、それぞれの質量wを分子量Mで割ったもの(n=w/M)であることから、蒸気圧降下を測定することによって溶質の分子量を決定することができる。蒸気圧降下は、浸透圧凝固点降下沸点上昇とも関係があり、いずれにしても、これらの測定により、この法則を用いて溶質の分子量が決定されている。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラウールの法則」の意味・わかりやすい解説

ラウールの法則
ラウールのほうそく
Raoult's law

1888年 F.ラウールは,多くの溶液の蒸気圧の測定結果から1成分の溶液上の分圧 P と,その成分が純成分のときの蒸気圧 P0 との比が,その成分の溶液中のモル分率 x に近似的に等しいことを確認した。 PP0x 。これをラウールの法則という。たとえばA,B2成分の溶液において PAPA0xAPBPB0xB 。モル分率の定義から,xA=1-xB ,したがって PAPA0(1-xB) ,つまり (PA0PA)/PA0xB左辺を成分Aの蒸気圧降下という。したがって,溶媒Aの蒸気圧降下は溶質Bのモル分率に等しくなる。これもラウールの法則の1つの表現である。ラウールの法則は厳密には理想溶液にのみ適用されるが,希薄溶液では近似的によく成立し,溶質に対してヘンリーの法則も誘導される。また不揮発性の溶質を含む希薄溶液においても蒸気圧降下の関係がよく成立し,溶質のモル分率の決定から分子量を求めることができる。

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