日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーマクリシュナ」の意味・わかりやすい解説
ラーマクリシュナ
らーまくりしゅな
Rāmaka Paramahansa
(1836―1886)
近代インドの宗教家。本名はガダーダル・チャットーパーディヤーヤGadādhar Cattopādhyāya。ベンガルの貧しいバラモンの家に生まれ、学校教育はほとんど受けていない。幼時からさまざまな神秘体験をした。17、18歳でカルカッタ(現、コルカタ)に出て、祈祷(きとう)や祭式の仕事をしていたが、21、22歳のころ、タクシネーシュバルのカーリー女神を祀(まつ)る寺院の役僧となった。その後12年間、彼は世俗を捨てた生活を送り、ベーダーンタ哲学やビシュヌ派の諸聖典の研鑽(けんさん)に努めた。その結果、神秘的交感のうちにカーリー女神やその他のヒンドゥー教の諸神との合一を達成でき、自らを神の化身(けしん)と考えるようになった。その後もイスラム教やキリスト教に接近し、それぞれの宗教の修行を積み、さまざまな神秘体験を得、ついにあらゆる宗教において神に至る道が同一であることを確信した。このような体験と確信に基づいて神のことばと真理を語り始めた彼のもとに多くの民衆が集まり、1875年ごろにはベンガル地方の大きな宗教勢力となった。しかし、局地的な存在にすぎなかった彼の名を世界的にしたのは、1882年に彼の弟子となったビベーカーナンダである。ビベーカーナンダはラーマクリシュナの死後、その名を冠したラーマクリシュナ・ミッションを設立して、世界に向けての組織的な伝道活動を行った。
[増原良彦 2018年5月21日]
『奈良康明著『人類の知的遺産53 ラーマクリシュナ』(1983・講談社)』▽『マヘンドラナートグプタ著、日本ヴェーダーンダ協会訳『ラーマクリシュナの福音』(1981・日本ヴェーダーンダ協会)』