翻訳|Kolkata
インド東部、西ベンガル州の州都。東部インドの一大中心都市である。コルカタは、17世紀後半のイギリス植民地時代より、長くカルカッタCalcuttaとよばれてきたが、西ベンガル州政府は1999年に、植民地時代の名を改めて、現市名に名称変更した。人口458万0544、郊外地域を含めた大都市圏人口は1321万6546(2001)である。
ガンジス川の本流であるフーグリ川左岸の、河口から約150キロメートルさかのぼった所に位置する。市街地は河岸の自然堤防に沿って南北に長く延び、対岸のハウラ側も同様である。市街地周辺は低湿地が多く、無数の溜池(ためいけ)が存在する。コルカタの最初の発祥地はハウラ橋の南、BBD広場(元のダルハウジー広場)付近で、以後周辺へ発達した。1742年マラータ同盟軍の侵入に備えて、町の周囲に堀を巡らした。のちにこれは埋め立てられ、市の中心を取り巻く環状道路となっている。1857年のインドの大反乱(セポイの反乱)が平定されたのち、インドはイギリスの完全な植民地となり、コルカタはイギリス東インド会社の根拠地であった。以後1911年デリーに首都が移るまで、文字どおりインドの中心で、鉄道も1900年までにデリー、ムンバイ(ボンベイ)、チェンナイ(マドラス)などインド各地に通じる路線が開通した。クリミア戦争以後、ジュート(黄麻(こうま))の需要が高まり、またアメリカの南北戦争によって綿花の需要も高まったので、コルカタ周辺にジュートや綿花の紡績工業が発達した。さらに船舶の大型化に備えて、市の南部キデルプルに大型ドックをつくった。1907年に西方225キロメートルのジャムシェドプルにインド最初の製鉄所がつくられ、これを原料にコルカタは重工業部門でも発展をみ、首都移転後もさしたる影響もなく発展していった。これらの工場は市街地周辺に立地している。
第二次世界大戦後インド独立に際してコルカタは、ヒンターランド(後背地)であるベンガルの大半が東パキスタン(現バングラデシュ)となり、多くの難民が流入した。また工場が老朽化し、多くの失業者を抱えている。このためコルカタはインド最大の都市問題を抱えている町といわれている。
コルカタの都市形態は東西南北に直交する街路を基準とした碁盤目割りの街路網である。BBD広場の南には広大なマイダン公園があり、その東側のチョーリンギー通り(ジャワハーラル・ネルー通り)はコルカタの中心街である。この通りの北部はインド人が多く居住する地区であり、南はイギリス人が多く住む地区であった。学術、文化面ではインドの中心で、カルカッタ大学はじめ博物館、図書館、国立劇場などがあり、統計研究所や国土地図院など研究所も多い。ほかにマイダン公園の中央にあるウィリアム要塞(ようさい)、七宝(しっぽう)をちりばめた塔をもつジャイナ教寺院などが有名。北方19キロメートルにダムダム国際空港がある。
[北川建次]
1690年にイギリス東インド会社が商館を設けるまでは、小さな市場のある寒村であったが、イギリスの東部インド進出の拠点として発展した。プラッシーの戦い(1757)後、会社が領域支配を固めるにつれ、ダッカ、ムルシダバードなどの旧都をしのぐ都市に急成長した。こうして、1710年の1万人余の人口が1750年代には10万を超えた。1773~1911年の間、イギリス領インドの首都であり、また、ジュート、茶など植民地的産品の貿易を独占したイギリス系代理商会や経営代理店が集中して繁栄した。その後も今日に至るまで、インドの代表的商工業地域としての地位を保っている。市当局は初期から自治的要素を与えられたが、国民会議派を中心とする民族運動が高揚するなか、1923年には完全な民選による市自治体The Corporation of Calcuttaが実現した。1901年の統計によると、市の人口は85万人、そのうち、コルカタ生まれ33%、ベンガルの出身者50%、ガンジス上流地方出身者14%である。人口の75%が男性。使用言語はベンガル語52%、ヒンディー語38%、英語3%。宗教はヒンドゥー教65%、イスラム教30%、キリスト教4%。以上の数値から、コルカタが新興の植民地都市であり、その人口の大きな部分が出稼ぎ的性格を有したことが読み取れる。また市中人口を経済程度で分けると、最上位にイギリス人、ついでベンガルの上位カースト、非ベンガルのヒンドゥー教徒、ベンガルの中位カースト、イスラム教徒、そしてベンガルの最下層カーストの順であった。
[谷口晋吉]
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