日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビベーカーナンダ」の意味・わかりやすい解説
ビベーカーナンダ
びべーかーなんだ
Vivekānanda
(1863―1902)
近代インドの宗教思想家。本名ナレーンドラナート・ダッタNarendranāth Datta。カルカッタ(現、コルカタ)のクシャトリヤの名門に生まれる。カルカッタの大学で近代的・西洋的教育を受けたが、1882年にラーマクリシュナと出会い、彼に師事した。師の死後(1886)は、その教えの布教に努めた。
1893年、アメリカのシカゴで開催された世界宗教会議に、南インドのヒンドゥー教の代表者として出席、あらゆる宗教が帰一することを主張して好評を博した。これを機縁に彼の世界的な伝道活動が始まった。1896年には彼はアメリカのニューヨークにベーダーンタ協会を設立し、翌1897年にはインドにラーマクリシュナ・ミッションを創設した。1898年から1900年にかけてはアメリカおよびヨーロッパの各地を伝道のために遊歴した。1902年、39歳の若さでインドのカルカッタ付近のベルールの僧院で没した。
彼の生涯の活動は、ラーマクリシュナが神秘体験によって獲得したベーダーンタ哲学の不二一元(ふにいちげん)論の思想を、人々の間に広めることであった。不二一元論によって諸宗教の対立が解消されるというのが彼の主張であった。また、奉仕の活動こそが宗教修行の原点であるとして、病院の設立や教育活動を推進した。主著に『カルマ・ヨーガ』がある。
[増原良彦 2018年5月21日]