アメリカの作家W.アービングの《スケッチ・ブック》(1819-20)に収められた同名の短編の主人公。狩りに出かけたリップはキャッツキル山中で不思議な男たち(イギリス人探検家H. ハドソンとその仲間の幽霊であることがのちにわかる)に出会い,彼らの酒を飲み眠りこむ。目覚めて家に帰ってみれば20年がたっており,アメリカは独立していたという浦島太郎風の人物。アメリカにおいて神話・伝説的人物となり,のちにメルビル,ハート・クレーンなどの詩に歌われ,一方では〈時代遅れの人間〉を指す普通名詞ともなった。作品は,日本では山田美妙編《新体詞選》(1886)に丸岡九華によって韻文訳され,また森鷗外の《新世界の浦島》(1889。のち《新浦島》と改題)をはじめ多くの翻訳で親しまれている。
執筆者:島田 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…しかし時間的・空間的にはるかなものにロマンティックな憧れを抱き,それを典雅な文体で描き絵画的美を生み出した。また神話・伝説のない国アメリカに,ヨーロッパ種の伝説を移植して,リップ・バン・ウィンクルや《スリーピー・ホローの伝説》のイカボッド・クレーンなど,アメリカ神話の原型というべき人物を創造した功績が評価されている。【島田 太郎】。…
…ニューヨーク市から比較的近いので,夏・冬のレクリエーション地域となっている。キャッツキル森林保護区は,W.アービングの《スケッチ・ブック》で描かれたリップ・バン・ウィンクルの伝説の地を含み,この山地の中で最も風景の美しい地区である。【菅野 峰明】。…
…1819‐20年分冊出版。山中で出会ったふしぎな男たちの酒を飲んで眠りこみ,目覚めて家に帰ってみれば20年経っていたという浦島太郎風の《リップ・バン・ウィンクル》や《スリーピー・ホローの伝説》などアメリカを舞台にした物語,インディアンに同情を惜しみなく注ぐ《フィリップ王》,ヨーロッパの綺談《幽霊花婿》,イギリスの印象記《ウェストミンスター・アベー》など,短編,スケッチ34編を収録。出版されるや,典雅な文体,上品なユーモア,ペーソスのため一躍有名となり,アメリカ文学の存在をヨーロッパに認めさせた。…
※「リップバンウィンクル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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