バン(読み)ばん(英語表記)moorhen

翻訳|moorhen

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バン」の意味・わかりやすい解説

バン
Gallinula chloropus; common moorhen

ツル目クイナ科。全長 30~38cm。羽色は全体に灰黒色で,脇と下尾筒は白色。額にが延長したような額板があるが,これは繁殖期には赤く,非繁殖期になると暗緑色になる。嘴は先が黄色で,基部は赤い。水辺水草の茎や葉を集めて巣をつくり,5~10個の卵を産む。は全身黒色の綿羽に覆われ,大きな趾(あしゆび)も黒く,頭と嘴基部のみ赤い。親鳥がその年に 2度目の繁殖をするとその子育てを手伝う。ユーラシア大陸とアフリカ温帯熱帯に広く分布する。日本には,東日本では夏鳥(→渡り鳥)として渡来し,西日本では留鳥として各地の池,沼,川岸などに生息する。蹼(みずかき)はないが,泳ぎは得意で,水面湿地で植物質の餌や水生の小動物をあさって食べる。「くるるっ」と鳴く。

バン
Van

トルコ東端の都市で,同名県の県都。バン湖の東岸,標高 1750mに位置する。前8~7世紀にウラルトゥ王国の主要な中心地ビアイナであった。王国アッシリアに破られたのちは,支配者を次々と変えたが,前1世紀には古代アルメニア王国に組込まれた。8世紀にはバグラティド朝アルメニアに支配されて繁栄した。その後セルジューク・トルコを経て 1543年にオスマン帝国に併合され,第1次世界大戦中にはロシア軍に占領された。周辺地域の産物皮革穀類果物,野菜の集散地である。アンカライスタンブールとは空路で結ばれる。人口 15万 3111 (1990) 。

バン
bán

太守。ハンガリー王国南部に設けられた行政管区の長。もともとはクロアチア王国の官職名。 1102年以降,ハンガリー国王の宗主権下に入ったクロアチア,ダルマチア,スラボニア地方の支配をハンガリー国王から委任された者。 1241~42年のモンゴル侵攻後,サバ川以南に王国防衛のために設けられた諸軍管区の長もバンと呼ばれた。 1526年のモハーチの戦いでハンガリー王国がオスマン帝国に敗れて以降は,クロアチア,スラボニア太守のみ存続

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バン」の意味・わかりやすい解説

バン
ばん / 鷭
moorhen
common gallinule
[学] Gallinula chloropus

鳥綱ツル目クイナ科の鳥。全長約33センチメートル。頭頸(とうけい)部と下面は灰黒色で、背面は暗緑褐色、わきに1条の白帯がある。下尾筒は白い。先端の黄色い嘴(くちばし)と赤い額板が特徴であるが、非繁殖期には額板は小さく、緑褐色となる。幼鳥は褐色に富む。オーストラリアを除く世界の温帯、熱帯に広く分布する。日本には夏鳥として渡来し、全国の河川、湖沼、ハス田などで繁殖するが、南日本では越冬するものもある。頸(くび)を前後に振って水面を泳ぎ、また歩くときには絶えず尾を動かしている。飛び方は弱く、足を下げたままゆっくりと飛び、すぐ近くに降りる。食性は雑食で、植物食も動物食もとる。繁殖は、湿地の草むらやアシの中に枯れ茎を集めて巣をつくって行い、1腹5~10個の卵を産む。抱卵期間は約21日。バン属は、バンも含めて世界に12種があり、新旧両世界の温帯と南半球に分布している。

[森岡弘之]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例