デジタル大辞泉 「リテラシー」の意味・読み・例文・類語
リテラシー(literacy)
2 特定の分野に関する知識や、活用する能力。「コンピューター
翻訳|literacy
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本来の意味は読み書き能力だが,パソコンの普及により情報技術(IT)の操作能力や,国際性を養うための外国語教育などにも適用されている。さらに広く,その能力を応用することまで含める。ここで用いるリテラシーとは「なんらかの分野で用いられている記述体系を理解し,整理し,活用する能力」である。
[専門分野のリテラシー]
1997年,経済協力開発機構(OECD)は,国際化と高度情報化の進行とともに多様性が増した複雑な社会に適合することが要求される能力概念「コンピテンシー」を,国際的,学際的かつ政策指向的に研究するため,DeSeCo(デセコ,Definition and Selection of Competencies: Theoretical and Conceptual Foundations,コンピテンシーの定義と選択:その理論的・概念的基礎)を組織した。これは,人生の成功と持続可能な発展を支える人材の能力とは何かを探求するものであった。その結果,キー・コンピテンシーとして①相互作用的に道具を用いる,②異質な集団で交流できる,③自律的に活動する,の三つが必要と結論づけられた。一方,この動きと並行して,OECDは初等教育修了段階における生徒の能力測定のため,1997年にOECD生徒の学習到達度調査(PISA)に着手した。PISA調査では新たなリテラシーの概念が提議された。そこでのリテラシーとは「多様な状況において問題を設定し,解決し,解釈する際に,その教科領域の知識や技能を効果的に活用して,ものごとを分析,推論,コミュニケートする生徒の力」と定義されている。これが高等教育に連なる各種リテラシー要求の背景である。
現在,リテラシーはメディア,コンピュータ,情報,視覚,ヘルス,精神,金融,科学,マルチメディア,統計,人種,文化,環境などさまざまな領域で議論されている。大学で求められるリテラシーは社会が期待しているものであり,専門分野ごとに違いがあっても,何らかのリテラシーの修得が高等教育に期待されている。以下に,DeSeCoのキー・コンピテンシーから考えられる,高等教育におけるリテラシーを列挙する。
[道具] 日本語,英語の読み書き会話能力。コンピュータの操作能力。ワープロ,表計算,プレゼンテーションの3種類のソフトにより資料を作成する能力は必須である。さらには,作業に必要な資料を収集し,分析するとともにまとめる能力。
[交流手法] 他人とコミュニケーションをとる能力。とくに他人と協力して成果を出す能力。さらにはグループ内での意見の対立を収める能力。
[自律性] 生涯学習につながる能力。自己の学習そのものを考える(メタ認知)能力がベースにあり,さらに大きな展望の中で活動する能力。また,人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する能力。
[基礎的なリテラシー]
専門分野のリテラシーでは,変化の大きなグローバル社会で活躍できる人物の基本的な能力が想定されている。一方で,トロウ(Trow)理論のユニバーサル段階に入った日本の高等教育では,同世代人口の半分以上が大学に進学するようになり,従来の意味でのリテラシー教育の重要性も再認識されている。諸星裕は日本の大学を研究型,教養型,底上げ型の3タイプに分類し,底上げ型の大学の目的を偏差値の低い学生を対象に相応の付加価値をつけることとしている。付加価値のコアとなるのは国語力と倫理観である。
早期にユニバーサル時代に入ったアメリカ合衆国での大学における自国語教育(アメリカ)は,基本的な英語力を学ぶ「English 101」をはじめ,自国語を含むすべての科目で行われる。担当の教員は専門の知識だけではなく英語自体もチェックし,不十分な場合は「writing clinic」に行くよう指示する。日本では,中等教育までの段階では「書くこと話すこと」の指導が十分には行われていない。論理的で適切な日本語を書き話す教育が,高等教育における基本的なリテラシーとして期待されている。多くの大学で倫理観の育成は教育目標に含まれるが,日本語力は必ずしも明示的ではない。日本語教育がカリキュラムに組み込まれ科目として提供されるとともに,日本語サポートセンターが実現されることが望まれる。このような基礎的なリテラシーとより高度な専門分野でのリテラシーとの組合せが,現代の高等教育でのリテラシーとなる。
著者: 細川敏幸
参考文献: 国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能4―OECD生徒の学習到達度調査(PISA) 2009年調査国際結果報告書』明石書店,2010.
参考文献: 文部科学省「OECDにおけるキー・コンピテンシーについて」:http://www. mext. go. jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/016/siryo/06092005/002/001. htm
参考文献: 諸星裕『大学破綻―合併,身売り,倒産の内幕』角川書店,2010.
参考文献: マーチン・トロウ著,天野郁夫・喜多村和之訳『高学歴社会の大学』東京大学出版会,1976.
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…状況論はビゴツキーL.S.Vygotsky(1896-1934)に始まる社会歴史的アプローチ,活動理論をベースにして,コールM.Cole(1938- )らのアメリカ・カリフォルニア大学の比較人間認知研究所を中心として展開されている学際的な理論的志向を指す。特に,リテラシーなどの文化的道具と認知との関係に関する研究,工場や家庭における日常的認知の研究は,状況論的な学習の理論化において重要な役割を果たした。エスノメソドロジーの知識観,行為観も強い影響を与えている。…
…英語では,これに〈スリーアールズ〉(読み・書き・算を表すreading,writing,arithmeticの3語にRがあるので,3R’sという)の語をあてる。また読み書き能力を表す〈リテラシーliteracy〉の語の定着は1880年代以降であり,このことはその時期から読み書きが万人に必要な基礎能力とみられるようになったことを示している。ただし基礎能力といっても,どこまでの範囲をさすかあいまいである。…
…従来,ロボットの設計・製作・制御に重点がおかれていたため,ロボット工学を指す場合が多いが,近年,産業面以外の応用の議論が盛んになされ,ロボットに関連したさまざまな科学研究を総じて〈ロボティクス(ロボット学)〉と呼ぶ傾向が強くなってきている。現在,工場などで利用されている産業用ロボットは,一般大衆がイメージするロボットから程遠く,後者は主に大学や研究所などで〈自律ロボット〉として研究対象となっている。…
※「リテラシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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