コンピテンシー(読み)こんぴてんしー(英語表記)competency

翻訳|competency

デジタル大辞泉 「コンピテンシー」の意味・読み・例文・類語

コンピテンシー(competency)

コンピタンシー

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コンピテンシー」の意味・わかりやすい解説

コンピテンシー
こんぴてんしー
competency

一定の職務や作業において、絶えず安定的に期待される業績をあげている人材に共通して観察される行動特性。豊富な知識や高い技能、思考力のある人がかならずしも業績をあげられない事実に着目し、好業績を達成している人材(ハイパフォーマー)にみられる行動、態度、思考パターン、判断基準などを特性として列挙したものをさす。コンピテンシーは英語で「能力」「有能」を意味する。アメリカで1990年代に人材の採用、昇格、配置などの基準として普及し、日本でも1990年代後半から人事評価基準に取り入れる企業や団体が増えている。

 1970年代初め、アメリカ国務省から「学歴や入省試験結果が似通った人物でも外交官としての実績に差がでるのはなぜか」との調査依頼に基づき、ハーバード大学心理学教授のデビッド・マクレランドDavid C. McClelland(1917―1998)らの研究内容から生まれた概念である。学歴や知能は業績とあまり関係がなく、好業績者には「良好な対人関係の構築力」「高い感受性」「信念の強さ」など複数の特性がみられるとの結論がコンピテンシー理論の基礎となった。その後、弟子のケース・ウェスタン・リザーブ大学教授リチャード・ボヤツィスRichard E. Boyatzisが約2000人の管理職の成果と行動特性を調査し、コンピテンシー理論を実践的体系にまとめた。

 コンピテンシー理論は好業績を達成している人の行動特性として「傾聴力・顧客志向」「計数処理能力」「変化適応力」「ビジョン設定力・リーダーシップ」などを列挙することが多い。ただこうした行動特性が業務に対する「共鳴」「使命感」「価値観」などの心理的動機に支えられている2階建て構造であることが重要とされる。

 ただコンピテンシーは同一業界・職種でも求められる戦略によって違ったものになる。このため行動特性それぞれを分解して指標にするのは無意味であり、人材評価などに使うべきではないとの意見もある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

図書館情報学用語辞典 第5版 「コンピテンシー」の解説

コンピテンシー

特定の職務において効果的な高業績または優れた行動結果に結びつけられる個人の特性のこと. 1970年代米国で心理学者マクレランド(David C. McClelland 1917-1998)の研究を出発点に発展した.知識やスキルだけでなく価値観,性格,使命感を包含しており,重要な事項を達成するための能力開発に活用される.米国の図書館界では1990年代から議論され,2009年アメリカ図書館協会が「図書館員のコア・コンピテンシー(Core Competencies of Librarianship)」を発表したほか,館種・地域・サービスごとに多様に提唱されている.また,経済協力開発機構(OECD)では,個人の生涯にわたる根源的な学習能力をコンピテンシーとし,(1)自律的に行動する能力,(2)社会的な異質の集団における交流能力,(3)社会的・文化的・技術的ツールを相互作用的に活用する能力を「キー・コンピテンシー」と位置づけている.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「コンピテンシー」の解説

コンピテンシー

アメリカの人事評価の考え方で「成果を生む望ましい行動特性」のこと。米国防総省(ペンタゴン)が組織のチーム編成をする際に採用し、90年代半ばから企業に広まった。部署やポストごとに成績優秀な社員の行動を分析し、その特性を明らかにし、人事評価、採用などの基準とする手法。実績や成果などの数値にとらわれず、人材が持つ潜在能力を評価する基準として利用される。日本企業ではコンピテンシーを利用して職能資格制度の再設計に乗り出す企業も出てきたが、生みの親のアメリカでは限界を指摘する声も出てきている。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

人材マネジメント用語集 「コンピテンシー」の解説

コンピテンシー

・competency
・1990年代よりアメリカで広く一般化したもので、スペンサー&スペンサーのモデルが有名。
・特定の状況のもとで、特定の目的を達成するために、特定の成果を生み出すことができる力という行動特性を表した実践的な概念。一般には好業績者の行動特性の発揮度を抽出し、モデル化して活用する。
・近年は広く人材マネジメントに活用され、人事考課の評価項目としても活用されている。

出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報

人事労務用語辞典 「コンピテンシー」の解説

コンピテンシー

コンピテンシーとは、優秀な成果を収めているハイパフォーマーの行動や考え方に関する特性のこと。どのような状況でも、独自の工夫を加えた主体的な行動を起こす人材を育成することを目的に、多くの企業で導入されています。ハーバード大学における研究結果がもととなり、1980年代にアメリカで普及しはじめた、心理学を背景とする概念です。

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

とっさの日本語便利帳 「コンピテンシー」の解説

コンピテンシー

ある職務に必要とされる知識や技能や価値観などをまとめた特性。その職務で高い業績を上げ続けている人の特性ともいえる。特定の職務について要求されるコンピテンシーをまとめ、コンピテンシー・モデルとすることもある。〈活用例〉彼の高いコンピテンシーを、みんなで見習う必要がある

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android