人間の生活における、ことばによるコミュニケーション全般。あるいは、人間の生活を食生活、衣生活、経済生活といったぐあいに、さまざまな種類に分けてみた場合、とくにことばによるコミュニケーションの側面を取り出して言語生活とよぶという考え方もある。
人間のことばによるコミュニケーションは一様ではない。まず、話す、書くといった表現の面と、聞く、読むといった理解の面とがある。また、多くの言語社会では、音声による伝達のほかに文字による伝達がある。そして、音声、文字に関する具体的な媒体の種類も多い。ことばが使われる目的としては、客観的な物事についての情報の伝達、感情・感覚の表現、他人を動かそうとする意向の表現、芸術的創作、鑑賞、遊戯、社会的関係の開始・維持・打ち切りに関するものなど、いろいろのものがある。こうした目的に応じて、伝えられる内容も多種多様である。言語生活という概念は、これらさまざまな側面、要素をひっくるめて把握しようとするものである。
日本語の研究において、言語生活という概念が現れたのは第二次世界大戦前であるが、その実態の調査・研究が本格的になったのは戦後である。最近は、言語学のなかで、社会言語学sociolinguisticsとよばれる分野の研究が世界的に盛んになってきている。これは、従来からの日本での言語生活の研究と共通する点が少なくない。
[南不二男]
『池上禎造著『言語生活の構造』(『講座現代国語学Ⅰ』所収・1957・筑摩書房)』▽『国語学会編『国語学大辞典』(1980・東京堂出版)』▽『国広哲弥他著『言語生活』(『岩波講座 日本語2』1977・岩波書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1948年の国立国語研究所設置法の公布をもって創設された研究機関。目的は同法1条に〈国語及び国民の言語生活に関する科学的調査研究を行い,あわせて国語の合理化の確実な基礎を築くために,国立国語研究所を設置する〉と規定され,その目的を達するために2条に〈(1)現代の言語生活及び言語文化に関する調査研究。(2)国語の歴史的発達に関する調査研究。…
※「言語生活」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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