リトープス(読み)りとーぷす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リトープス」の意味・わかりやすい解説

リトープス
りとーぷす
[学] Lithops

ツルナ科(APG分類:ハマミズナ科)リトープス属の総称。メセンブリアンテマムの仲間で、37種56変種と地方型180品種が発見されている。属名は、ギリシア語のlithos(石)とops(顔)の二語からなる。原産地は南アフリカ・ナミビアの極度に乾燥した地帯で、片麻(へんま)岩大地の南斜面岩床の割れ目や崩壊した礫砂(れきさ)に覆われた立地に埋もれて自生している。リトープスはこの礫砂に頂面の色彩と模様が酷似するため発見が困難であり、動物の食害からも擬態により身を守っている。

 植物体は極度の乾燥に耐えるため、一対の葉を高度に多肉化させ、雨期に水分を蓄え乾期に備えている。秋になると一対の葉の割れ目からつぼみを出し、開花結実する。花は白、黄色であるが、まれに赤色もあり、植物体よりも大きい。成長期は秋から春で、夏眠する。

[島田保彦 2021年2月17日]

文化史

1811年に最初の種(露美玉(つゆびだま)L. turbiniformis (Haw.) N.E.Br.)が発見された。二番目の種(曲玉(まがたま)L. pseudotruncatella (Bgr.) N.E.Br.)はそれから100年近くたった1908年に発表されたが、これはただちに注目を集め、日本にも1917年(大正6)に導入された。当時は高価で、4~8円で売られた。リトープスは産地が限られ、数も少ないため、発見直後はしばしば珍種の扱いを受け、紅大内玉(べにおおうちだま)L. optica N.E.Br. f. rubra (Tisch.) Rowl.は1930年代の初めダイヤモンドより高かった。

[湯浅浩史 2021年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リトープス」の意味・わかりやすい解説

リトープス
Lithops; stoneface

ツルナ科の多年草。南・南西アフリカに自生する砂漠の多肉植物。葉は1対,大部分は基部から合着し倒円錐形球体となる。葉の最下部に短い茎があり,コルク質におおわれる。花は生長の極期に1球体から1花をつけ,黄色または白色で午後に開花,夕刻に閉花,1週間ぐらい繰返す。乾期には球体が萎縮して地中に埋もれ,周囲の色彩と模様が似ているので生長期でないと見つけにくい。現在までに2亜属 98種が知られており,日本でもマガタマ,シクン,コハクギョクなど多数の観賞用栽培品がある。

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