リトープス(その他表記)Lithops

デジタル大辞泉 「リトープス」の意味・読み・例文・類語

リトープス(〈ラテン〉Lithops)

ハマミズナ科リトープス属の多肉植物総称南アフリカ原産。球状二つの葉の間から白・黄色の菊に似た花を咲かせる。

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改訂新版 世界大百科事典 「リトープス」の意味・わかりやすい解説

リトープス
Lithops

ツルナ科の高度に多肉化したリトープス属Lithops植物の総称。外観は小石状であり,イシコログサとかイシコロギク別名をもつ。実際,礫(れき)のあいだに自生していて,まわりの礫と色が類似する種類が多い。南アフリカとナミビアに分布する。英名はliving stone,stoneface,flowering stone,mimicry plant。通常,茎はなく,下部で合着した一対の葉は球状に多肉化するが,先端は台形で,その上には透明部や濃色部分があり,複雑な斑紋をなし,種を識別する特徴にされる。100種以上の種が記載されているが,種の差は軽微である。春に古い葉が割れ,その中から新葉が顔を出す。花は対になった葉の間から1個が頂生するが,花梗はほとんどのびない。黄花と白花があり,それによって2群に分けられる。白花群の葉頂はややふくらむ。花期は夏咲きと秋咲きがあり,マガタマ(曲玉)L.pseudotruncatella(Berger)N.E.Br.系とアラタマ(荒玉)L.gracilidielineata Dint.系は6~7月に開花するが,その他は9~11月に咲く。秋咲きの代表種には黄花群ではツユビダマ(露美玉)L.turbiniformis(Haw.)N.E.Br.が,白花群ではリフジン(李夫人L.salicola L.Bol.がある。ツユビタマは1811年に,イギリス人のバーチェルBurchellによって,リトープス属としては最初に発見された。

 リトープス属に近い大きな群にコノフィトゥム属Conophytumがある。リトープスとは花梗に苞葉のある点で区別される。葉形は多様で,1対の葉がほとんど合着し,頂面が平らな駒形から,鋭く切れこむ足袋形,ハート形,卵形,短円筒とさまざまである。普通は高さ5cm以下で,多数が群生する。花は秋咲きが主で,少数が夏に咲き,昼開性が多いが夜開性もある。花色は黄,橙,赤紫,桃,白色と豊富である。春に古葉がしおれて裂け,2,3葉から4,5葉に分頭する。

 繁殖は分球による。リトープス,コノフィトゥムともに排水のよい用土に植え,夏は涼しく,冬は氷凍させないように育てる。夏季は灌水すると腐死しやすいので断水し,強制休眠させる栽培法もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リトープス」の意味・わかりやすい解説

リトープス
りとーぷす
[学] Lithops

ツルナ科(APG分類:ハマミズナ科)リトープス属の総称。メセンブリアンテマムの仲間で、37種56変種と地方型180品種が発見されている。属名は、ギリシア語のlithos(石)とops(顔)の二語からなる。原産地は南アフリカ・ナミビアの極度に乾燥した地帯で、片麻(へんま)岩大地の南斜面岩床の割れ目や崩壊した礫砂(れきさ)に覆われた立地に埋もれて自生している。リトープスはこの礫砂に頂面の色彩と模様が酷似するため発見が困難であり、動物の食害からも擬態により身を守っている。

 植物体は極度の乾燥に耐えるため、一対の葉を高度に多肉化させ、雨期に水分を蓄え乾期に備えている。秋になると一対の葉の割れ目からつぼみを出し、開花結実する。花は白、黄色であるが、まれに赤色もあり、植物体よりも大きい。成長期は秋から春で、夏眠する。

[島田保彦 2021年2月17日]

文化史

1811年に最初の種(露美玉(つゆびだま)L. turbiniformis (Haw.) N.E.Br.)が発見された。二番目の種(曲玉(まがたま)L. pseudotruncatella (Bgr.) N.E.Br.)はそれから100年近くたった1908年に発表されたが、これはただちに注目を集め、日本にも1917年(大正6)に導入された。当時は高価で、4~8円で売られた。リトープスは産地が限られ、数も少ないため、発見直後はしばしば珍種の扱いを受け、紅大内玉(べにおおうちだま)L. optica N.E.Br. f. rubra (Tisch.) Rowl.は1930年代の初め、ダイヤモンドより高かった。

[湯浅浩史 2021年2月17日]

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百科事典マイペディア 「リトープス」の意味・わかりやすい解説

リトープス

ツルナ科リトープス属の多肉植物。いわゆるメセン類(メセングリアンテマ類)の一つ。アフリカ南部の砂漠地帯や砂礫(されき)地に100種ほどが自生するといわれる。明治初年に渡来。茎はなく,2枚の葉は変形し,筒,半月状の肉質となり,基部で合着,全体として石ころのような外見となる。表面には種々の斑紋があり,花期以外は目だたない。成熟すると体の頂部に割れ目ができ,中心部からマツバギクに似た花を開く。花色は白,または黄色。例外もあるが,日本での生長期は一般に秋〜春。小鉢に群植し,風通しと日当りのよい場所で栽培する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リトープス」の意味・わかりやすい解説

リトープス
Lithops; stoneface

ツルナ科の多年草。南・南西アフリカに自生する砂漠の多肉植物。葉は1対,大部分は基部から合着し倒円錐形の球体となる。葉の最下部に短い茎があり,コルク質におおわれる。花は生長の極期に1球体から1花をつけ,黄色または白色で午後に開花,夕刻に閉花,1週間ぐらい繰返す。乾期には球体が萎縮して地中に埋もれ,周囲の色彩と模様が似ているので生長期でないと見つけにくい。現在までに2亜属 98種が知られており,日本でもマガタマ,シクン,コハクギョクなど多数の観賞用栽培品がある。

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世界大百科事典(旧版)内のリトープスの言及

【メセン(女仙)】より

…ベルゲラントゥス属Bergeranthusは小型で,群生し葉は細く,メセン類では例外的に耐寒性が強い。(4)多年生で無茎,少数の葉が高度に多肉化した群 玉型女仙(たまがためせん)と呼ばれるグループで,リトープスLithops,コノフィトゥム属Conophytumのほか,葉の上部が半透明の凸レンズ状になったフェネストラリア属Fenestraria(2種あり,代表種はイスズダマ(五十鈴玉)F.aurantiaca N.E.Br.)(イラスト),オプタルモフィルム属Opthalmophyllum(18種),アルギロデルマ属Argyroderma(約50種),プレイオスピロス属Pleiospilos(33種)やギッバエウム属Gibbaeum(約20種)などの諸属が見られる。 高度に多肉化した種群は高温多湿を嫌うので,夏期には通風のよい日陰で,水を控えて育てるか,強制的に断水する。…

【メセン(女仙)】より

…ベルゲラントゥス属Bergeranthusは小型で,群生し葉は細く,メセン類では例外的に耐寒性が強い。(4)多年生で無茎,少数の葉が高度に多肉化した群 玉型女仙(たまがためせん)と呼ばれるグループで,リトープスLithops,コノフィトゥム属Conophytumのほか,葉の上部が半透明の凸レンズ状になったフェネストラリア属Fenestraria(2種あり,代表種はイスズダマ(五十鈴玉)F.aurantiaca N.E.Br.)(イラスト),オプタルモフィルム属Opthalmophyllum(18種),アルギロデルマ属Argyroderma(約50種),プレイオスピロス属Pleiospilos(33種)やギッバエウム属Gibbaeum(約20種)などの諸属が見られる。 高度に多肉化した種群は高温多湿を嫌うので,夏期には通風のよい日陰で,水を控えて育てるか,強制的に断水する。…

※「リトープス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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